ブルボンヌさん(女装パフォーマー)、光浦靖子さん(タレント)、松本晃さん(カルビー会長兼CEO)が、交代でお悩みに回答。仕事や私生活でモヤモヤしていることを一緒に解決してくれます。今回の回答者は松本晃さんです。

【今回のご相談】
女性向けの商品開発をしているのですが、ネーミング会議に毎回、社長(50代男性)が出席して、ダジャレ系や昭和っぽい古いセンスの商品名を提案してくるので困っています。その案を回避するために、会議の前に根回しをしたり、社内で匿名アンケートを行ったりと、余分な仕事が増えています……。[35歳・メーカー・昭和生まれ]

社長のネーミングセンスに困惑

会社の中で、「ものごとの決め方」を曖昧にしておくと、いろんな問題が起こる。トップが決めるのか、多数決なのかを明確にする必要がありますね。

社長が口を出してきたら、その場で確かめましょう。「それはアドバイスですか。それとも命令ですか」と。

カルビー代表取締役会長兼CEO・松本 晃さん

「命令だ」と言うなら、「ではその通りにします。命令するなら、最初から会議は必要ないですね。今後は社長が全部決めてください」と言えばいい。

「アドバイスだ」と言われたら、自分の意見をストレートに言いましょう。

「今はそんな時代じゃないですよ」「ダジャレみたいな名前、やめましょうよ」と。匿名アンケートなんて遠回しな方法ではなく、はっきりと口に出すほうが、社長にとっても親切です。もちろん、失礼にならないよう、言い方には工夫が必要ですよ。

もしそこで、「俺に向かって何を言う。けしからん」と怒るような社長なら、そんな会社は辞めていいと思う。世の中には会社なんか、何百万とあるんだから。社長の命令が絶対で、社員がやりたいようにできない組織には、喜びもなければ成長もありません。

ただ、「女性向けの商品なんだから、オッサンは口を出すな」というのであれば、それは変な話ですよ。

女性のものは、女性が開発すればすべてうまくいくかといったら、そんなことはない。カルビーには、女性社員が女性向けに商品開発して、成功しなかった事例がいくつかあります。

そもそも、女性向けの商品を売るのは、とてもリスキーなんです。とくに、30代以上の女性をターゲットにした市場は難しい。彼女たちは目新しいものに敏感だけれど、割安かどうかを非常にシビアに判断する。おまけに移り気で、すぐ別の商品に浮気してしまう。

自分が面白いからやる、自分の感性に合うからやる、というやり方では、最初はうまくいったとしても、いつか失敗します。ビジネスというのは「結果がすべて」。お客さんの行動はそのまま数字になって表れる。私は「ザ・ナンバー・イズ・オネスト(数字は正直だ)」という言葉が好きです。

しかし、数字がよくなくても落胆することはない。その失敗から学べばいいんです。何が間違っていたかを検証して、じゃあ次はどんな手を打とうかと、知恵をしぼって考える。それがビジネスの本当の面白さです。妙な根回しはやめて、社長にきちんと意見を言い、お客さん=数字と真剣に向き合う覚悟をもってみてはいかがですか。

【松本晃さんからのアドバイス】
根回しするのはやめてまずはストレートに意見を口にしましょう

松本晃(まつもと・あきら)
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事に入社。ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長、同最高顧問などを経て、2009年よりカルビー代表取締役会長兼CEO。

構成=中津川詔子 撮影=遠藤素子