3.資産価値維持の決め手「管理」のあり方

もう一つ、資産価値維持に強く関係するのは管理である。これは古くなればなるほど重要になるが、残念なことに新築時にはどうなるかが分かりにくい。ご存じのように管理は分譲後、住民が管理組合をつくってコントロールしていくことになる。

管理組合がきちんと機能していれば日常の清掃から大規模修繕にまで目が行き届き、物件の価値は維持されるが、誰もが無関心で、いやいや関与しているような状態では、価値の維持は見込めない。だが、残念ながら後者が多いのが現状。自分の購入した物件の価値を維持したいのであれば、資産管理団体である管理組合には積極的に関わるべきなのである。

(写真上)「パークシティ溝の口」敷地内に設けられた植栽スペース。季節の花々が植えられ生活に彩りを添える。(写真下)同、経年で樹木が大きく育った緑道の様子。

ちなみに管理状況が如実に分かるのは植栽。資産価値が維持されている物件は植栽が見事なのである。ここまででご紹介した「広尾ガーデンヒルズ」「パークシティ溝の口」「サンシティ」はいずれも大規模なマンションで、分譲時に植えられた木々は森のように成長しており、地域でもひときわ目立つ存在。建物は手入れをしても少しずつ劣化するものだが、植栽は経年で良くなる。その意味では植栽は経年変化をカバーする強力なアイテムと言えるだろう。

では、最後にこうしたマンションを見抜くポイントだが、新築時には立地、建物や敷地のプランニングから判断することになる。中古の場合には物件の価格推移を見れば分かるはずだ。今回実名を挙げた以外にも、地域でナンバーワンと目され、価値を維持している物件は意外にあるので、地元の不動産会社に聞いてみると、この街で買うならコレという物件が分かる。

管理に関しては植栽を見るだけでなく、管理組合の役員の任期、活動の状況を確認、継続性を持って熱心に管理に取り組んでいるかどうかを聞いてみるのも手。一般には管理組合の役員は1年交替になっていることが多いが、修繕や建物メンテナンスにまじめに取り組もうとすると、1年は短期すぎる。そのため、意識の高い組合では任期を長くする、修繕に関する委員会を作るなどして対応していることがある。確認してみよう。

中川寛子
東京情報堂代表、住まいと街の解説者、日本地理学会会員、日本地形学連合会員。
住まいの雑誌編集に長年従事。2011年の震災以降は、取材されることが多くなった地盤、街選びに関してセミナーを行なっている。著書に『キレイになる部屋、ブスになる部屋。ずっと美人でいたい女のためのおウチ選び』『住まいのプロが鳴らす30の警鐘「こんな家」に住んではいけない』『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など。11月5日に新刊『解決!空き家問題』(ちくま新書刊)が発売されたばかりだ。