寛容なあなた、今宵は普通の木曜と思って仕事を

【河崎環さんの回答】

クリスマスイブの遅番勤務を引き受けてしまったのですか!? それは手痛い損失ですね。特に予定も断る理由もないだなんて寛容なことをおっしゃいますが、そりゃもう「世界中であなただけが大損」です。どのような機会損失をしたのか、以下分析してみましょう。

■現状、誰からも誘われていないとはいえ、ひょっとしてイブの19時に「いま◯◯にいるんだけどさ……いま何してるの? 今夜ヒマ?」と誰かから突然の誘いが滑り込むのを、もしかして「あっ……私、今夜予定ないんで……是非?」とOKし、何かの弾みで運命的な物語が始まるかもしれないという絶好の機会損失

■現状、何の予定もないとはいえ、独りで、あるいは同じく「たまたま予定がなかった人々」と、固い鶏モモ肉をしみじみとかみちぎり、薄い酒で流し込み、中身のスポンジはスカスカなのにクリームだけべったりと重いケーキを腹に収める行為によって、生粋の仏教徒としてイエス・キリストの生誕前夜を祝う崇高な機会損失

■実家の親から「クリスマスイブなのに家にいるの?」と皮肉られながら、あったかいコタツで民放の特番をザッピングして寝落ちする、至福の機会損失

そうです。クリスマスを独自に解釈した国、日本の一国民として、クリスマスイブにしかできない数々の幸せを、あなたはみすみす手放したのです(そんなワケない!)。折しも今日はイブ当日。普通の木曜夜の勤労生活を粛々と送りましょう。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。

文=本田健、河崎環 イラスト=伊野孝行