夜勤をさせてもらえない焦り
学生の頃、石油開発企業の先生や実際のエンジニアの人たちから話を聞いていると、一本の井戸を掘ることから始まる石油開発の現場にロマンを感じました。井戸から実際に油が出た瞬間のエピソードなどは、聞きながらとてもわくわくとした気持ちになったものです。
ただ、実際に就職してみると、最初はいろいろと不安になることもありました。
採掘の現場は365日24時間、三交替で動いています。でも、どの現場に行っても女性は私ただ一人。そして現場研修では、「夜勤に大竹さんは入れられない」と言われていました。
実際に現場に出ると、大学院で学べることはこの世界のほんの一部で、やはり現場の経験がなければ使い物にならないことを痛感します。ですから、同期の男性社員が夜勤をしている最中、自分の得られる経験や知識が彼らより少なくなってしまう、と焦ったこともありました。結果的に、上司に懇願して夜勤にも入れることになりましたが、当時は私を受け入れる現場の側にも戸惑いや試行錯誤があったのだと思います。
研修を終えた後は新潟の鉱業所に配属が決まり、油田の管理を主に担当することになりました。どのように生産すればより多くの油が効率的に得られるかを、企画・検討していく仕事です。
油田をくみ上げる生産井は、油を取り続けているとだんだん元気がなくなってくるんです。また、一本一本の井戸には全て癖があって、ガスを入れる深度を最適化したり、ときには穴をあけ直したり。現場でデータ採取に立ち会い、くみ上げた水や油の成分を見ながら、地下がどんな状況になっているのかを把握していきます。体のレントゲンをとって中を見るのと似ています。
そうした鉱業所での仕事環境が一変したのは、結婚して出産した入社3年目のことでした。子供が産まれたことで、これまでのように夜勤での監督や夜通しの仕事に出られなくなり、仕事のやり方を根本的に変える必要が出てきたんです。
1999年(旧)帝国石油入社。国内油ガス田の管理を経験の後、本社技術企画部に異動し、各種シミュレーションスタディを担当。アメリカ・アフリカ事業本部にてプロジェクト管理業務を経験の後、2015年より技術基盤ユニット教育研修グループマネージャー。
構成=稲泉 連 撮影=村山嘉昭