他国の状況を例に取ってみよう。まず北欧諸国の場合、解雇はごく普通に行われる。セーフティーネットの失業保険や職業訓練は充実しているが、その分税負担は重い。つまり雇用のリスクを国民全体で負っている。アメリカも解雇は行われるが雇用の流動性が高く転職は容易だ。雇用リスクは社員が引き受ける自己責任型といえるが、転職のしやすさがセーフティーネットになっている。

雇用リスクの所在はどこに?

かなり乱暴な分類だが、北欧型・アメリカ型と日本型の違いは、企業に過剰な雇用リスクを負わせていない点だ。日本の「正規雇用=セーフティーネット」という捉え方が、現在のさまざまな雇用問題を生み出している。

「強い解雇規制+長時間労働」をもう少しマシな形に組み替えるのであれば、「解雇規制の緩和+労働時間の規制」という形になるだろう。現在は労働基準法の改正も進んでおり、今後は労働時間改革が進むと思われるが、それとセットで解雇規制にもメスが入る可能性は高い。

雇用の流動化が進めば不安に感じる人もいると思うが、実は大きなメリットもある。雇用の安定は、すなわち「雇用の固定」だ。人の入れ替えが困難な状況では、途中離脱の可能性が高い“女性”は、解雇以前に雇用の段階ではじかれてしまう。解雇は規制できても雇用は強制できないからだ。しかし、このような状況は大きく変わるだろう。そして流動性が高まれば取引が活発になって価格(給料)が上がるのは、株でも人材でも同じだ(これを流動性プレミアムという)。

雇用の流動化は多くの人にとって今後の人生を変えてしまうほどの影響がある。これからの法律の変化に注目したい。

中嶋よしふみ

ファイナンシャルプランナー、シェアーズカフェ・オンライン編集長。住宅・保険・投資等のアドバイスや、マネー・ビジネス分野の情報発信を行う。