ボース監督は、女性の映画監督として、自身の中で決めていることがあるという。それは、「愛情をもって、現場を作っていくこと」。

「映画業界において監督という立場は、ある種“神”のような存在です。全部の決定権が私たちにある。ただ、もともと男社会だったためか、女性が監督になっていざ映画を撮ろうとした時に、男性監督がやってきたように振る舞おうとする人がいることも事実です。常に攻撃的で、大声で怒鳴って周りを従わせようとする。私が監督デビューする前に心に決めたのは、愛情をもって周囲に接して、人間性と心のある現場にしていくということ。なぜなら、それが女性的なものであって、大きな怒声は私の現場には要らないと思ったのです」

世間一般では、女性は感情的な生き物で、論理的な思考の組み立てが苦手だと言われる。だが、ボース監督は「泣きたい時は泣いて、そしてしっかり仕事に戻ればいい」と訴える。

「実はこの映画を撮影する前、16歳の長男を不慮の事故で亡くしました。主人公が病院で母親を亡くすシーンでは、撮影機材をセッティングした後に息子が亡くなった時の病院の匂いを思い出し、体が強ばる思いをしたものです。でも、自分は監督として現場を切り盛りしなければならない。もしも従来型の男性監督の現場であれば、『泣いてちゃダメだ』と叱咤されると思いますが、私の負った痛みはそんな簡単なものではありません。息子のフラッシュバックが起きた時は、泣いてもいいと自分の中で決めて、実際何度も泣きました。でも、泣いた後には取り乱すことなく、撮影を進めることができたのです。『大事な人を亡くした女性は感情的だから、家にこもって泣いていろ』なんてとんでもない。涙は私を自由にしてくれた。そう今作の現場で学びました」

映画『マルガリータで乾杯を!』

脚本・監督:ショナリ・ボース
出演:カルキ・ケクラン、レーヴァティほか
配給:彩プロ
宣伝:ミラクルヴォイス
2014年/インド/100分
10月24日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
【公式HP】www.margarita.ayapro.ne.jp

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