単年では会社を知ることはできない

事業内容を理解したところで、次は会社の業績をチェックしてみましょう。見るべきは、売上高と当期純利益率の2点。売上高で会社の規模が、当期純利益率で会社がどれだけ効率よく儲けているかが分かります。利益率は高い方が良く、その分収益力が優れていると言えます。『利益率から企業の「景色」を見る! ─売上や利益より重視すべき理由』で詳しく説明していますので、そちらをご参照ください(http://woman.president.jp/articles/-/409)。

ベネッセは2015年3月期において連結ベースで4632億円の売上高を計上しているにもかかわらず、なんと107億円の当期純損失を出しています。つまり赤字です。純利益率はマイナス2.3%となります。連結損益計算書を読むと、情報流出事件に関連して260億円もの情報セキュリティ対策費という特別損失を計上したことが大きな要因であることが分かります。

このように1期のみの業績では特別な事情が絡んだりする場合もあるため、それをもって会社の実力を判断することはできません。

業績をチェックする際は、会社の経常的な収益力を知るために最低でも5年分の推移を見ることをおすすめします。有価証券報告書の【主要な経営指標等の推移】では5年分の業績推移が記載されているため、一目で確認することができます。

ベネッセの5年間の業績推移をたどると、赤字となったのは2015年3月期のみで、それ以外の期は当期純利益率4~5%と、安定した収益を上げていることが分かります。また、売上高も2015年3月期以外は年々増加傾向にあります。

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売上高および当期純利益の推移(編集部にて作図)

業績推移からは、これまで真面目に努力を重ねてきたことが読み取れますが、今後どうなるかは個人情報流出事件から受けたダメージをいかに乗り越えられるかにかかっています。ただ、通信講座事業で実質一人勝ちの状況で、しかも介護ビジネスや語学ビジネス、さらには海外事業にも乗り出していることを考えれば、長期的に見てまだまだ発展の余地がありそうです。