グローバルビジネス時代のアイコンタクト

「日本人はシャイだから、目ヂカラを込めて相手を見つめるなんて無理」と言う人がいます。だからといって、相手をきちんと見つめなければ、国際的な交渉の場などで相手にインパクトを与えられません。グローバルにビジネスを展開する今の時代、国際的にも通用するアイコンタクトの手法は必須スキルといえます。

1つおもしろい例を紹介します。アイコンタクトの日米トップ比較です。大統領になる前から「演説の天才が現れた」と全米の人気を集めたオバマ大統領は、2009年にアメリカ大統領に就任しました。その就任演説は19分20秒(1160秒)で、顔がはっきりと映っている時間は14分24秒(864秒間)でした。その864秒の間、聴衆へのアイコンタクトの時間は435.6秒、1分間あたりで30.2秒、演説全体の50.4%を占めていました。

一方、国をあげての「営業活動」、オリンピック招致プレゼンでの安倍首相スピーチはどうだったでしょうか。審査員へのアイコンタクトは全体で207.5秒、1分あたりで39.9秒、スピーチ全体の66.5%を占めていました。2006年の第一期首相就任演説での安倍首相のアイコンタクトがその3分の1もなかったことと比較すると、安倍首相のそれは驚異的に増えたことになります。安倍首相は相当にトレーニングを積んだと予想されます。オバマ大統領を上回るアイコンタクトの活用で、安倍首相のスピーチは審査員の心に残り、国家の営業は見事勝利しました。

まとめ:アイコンタクトは意識的に使う

交渉の場でのアイコンタクトは1秒間に32秒以上と覚えておいてください。

また、見つめる【方向性】【長さ】【強さ】によって相手を引きつけ、提案に集中してもらうこと。そのために提案内容をしっかりと暗記し、自信をもって臨むこと。途中で資料に目を向ける回数が多いと、せっかくのアイコンタクト効果が期待できないことになります。

また相手が目線を合わせてきた時は、アイコンタクトを外さないこと。これこそ営業のチャンスだと心してしっかり見つめ返してください。さらに、複数の相手が同席する営業先では、前もってその集団の意思決定者が誰なのかを調べて、その人を中心にして目線をデリバリーするといいでしょう。

これらのアイコンタクトの法則をマスターすれば、交渉の場で相手に鮮やかな印象を与えることができます。

佐藤綾子 パフォーマンス心理学博士

常に女性の生き方を照らし、希望と悩みを共に分かち合って走る日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーカウンセラー。日本大学芸術学部教授。「自分を伝える自己表現」をテーマにした単行本は180冊以上。新刊『30日間で生まれ変わる! アドラー流心のダイエット』(集英社刊)は9月4日発売。