女性型の交渉術がこれからのトレンド

長い時間をかけることも必要と言いましたが、「しつこいと思われるのでは?」という心配もあるでしょう。「しつこい人」と「熱心な人」はどこが違うのでしょうか? それは自分の意見だけに固執するのではなく、譲歩する余地を見せることだと思います。

実は私も長年対立をネガティブにとらえていたし、不得意だと思っていました。でも交渉のトレーニングに参加して、自分は対立ではなく交渉をしていたんだと気づいて自信をもちました。

PUBLISHING WOMEN NEGOTIATING-In the workplace and at home
2009年に出版されたe-bookは英語にも翻訳されている。自分だけではなく、相手にとっても建設的な交渉をするための便利なヒントが満載。職場だけでなく、親や夫や子どもなど、家族相手の日々の交渉にも。

「ambitious=野心的である」は、私にとってはポジティブな言葉です。良い交渉の鍵は野心的であること。私はこうしたい、私はそれに見合う人間ですと伝えましょう。本当に欲しいもののために交渉する人は、ポジティブに受け止められます。

私の夫は企業買収を手掛ける弁護士ですが、この交渉術を使っています。従来の男性的で闘争的なやり方ではなく、今は世界的にも、アジア的な、女性的な交渉術がトレンドになっています。女性が権力をもち、リーダーシップをとるようになってきた状況から、交渉のやり方も女性が得意とするような建設的でWin-Winを求めるやり方が存在感を高めているのです。今後、女性はさらに影響力を増していくと思いますし、自分たちのやり方で活躍することができると思います。

特に日本女性はもっと野心的に、押してもいい。交渉は相手を打ち負かすことではなく、変化を起こし、世界を前進させるツールなのです。

エグゼクティブアドバイザー マレーネ・リックス
1965年、デンマーク生まれ。エディンバラ大学卒業。イギリス、アメリカ、メキシコ、オーストラリアなどの国々で学び、働いてきた経験がある。フリーのアドバイザーとして企業や個人にリーダーシップや交渉術を教える。

構成=白河桃子 撮影=徳永 彩