このレビューの読者は、本好きな人や、働く女性が多いと思います。出張で新幹線に乗ったとして、現地までの2時間半~3時間、どんな読書をしますか? 「仕事の資料を読みます!」「自己啓発書を読んで志気を高めます!」「前から読みたかった文庫を買って、この時間だけは小説の世界に入り込みます」とさまざまでしょう。中には、「ひたすら、睡眠」という人も(笑)。

『熱狂宣言』(小松成美著/幻冬舎刊)

今回紹介する本は 眠気も吹き飛ぶ傑作ノンフィクション。どんな自己啓発書よりも、“仕事をしていくこと”の意味と意義を考えられること間違いなしです。

著者はノンフィクション作家の小松成美さん。小松さんはデビュー作から一貫して、“書くことの情熱”を大切にし、繊細な取材、書く対象と読者の視線、両方を深く考え、捉えていく書き手です。小松作品に共通するのは「(その人物の)知られざる表情」「声にならない言葉、叫び」が描かれること。作品ごとに自らハードルを上げていく、その真摯な姿勢に読者は夢中になるのです。

『熱狂宣言』は、外食産業を革新し続けている「ダイヤモンドダイニング」社長・松村厚久氏の“躍動”と“苦悩”と“希望”をつづったノンフィクション。外食業界のスター、東証一部上場企業の社長といえども、誰もが知っている著名人というわけではありません。ではなぜ、本書が生まれたのか? そこから、このノンフィクションは語りだします。