「勇気」、「自信」、「リラックス」、この3つの力はとても大切です。多くの人はそれらをバランスよく持って、自分を大好きで生きていきたいと思うことでしょう。

でも、なかなかそうできない時があります。周りの人から爪はじきになって孤独な気持ちになったり、失敗が続いて自己肯定感がガクンと下がり、自分が嫌いになったりもします。そんな日をフランスの哲学者アランは、人生の「雨の日」と呼んでいます。

「雨の日ほど、いい顔をしていたまえ」
アラン『幸福論』より

この言葉を記したアラン(本名 エミール・シャルティエ)は1868年、フランスのモルターニュ・オ・ペルシュに生まれ、1951年に没するまで、精力的に執筆を続け、50代後半で『幸福論』を書き、世界中で有名になりました。

この『幸福論』は哲学書ですが、読むと詩のようにリズミカルなのです。難しい哲学を体系的に読むという感じは全くありません。サラサラと流れる水のように、心の中に入ってきます。アランの思いは常に即興的であり、詩のようなのです。例えばこのようなことも言っています。

――今これを書いている時、雨が降っている。瓦に雨の音がして、無数の雨樋が切れ目なく歌っている。空気が洗われて、まるで濾過されたみたいだ。雲は切れ切れになった華麗な衣装のようだ。こういう美しさが分かるようにならねばならない――

アランのこのような思考パターンから生まれた『幸福論』は、あなたに気持ちの切り替え方と笑顔の大切さを教えています。人生の中で悪いことが起きた「雨の日」でも、笑っていようと言っているのです。

楽しいことがある日にニコニコしているのは当たり前。でも、嫌なことや辛いことがいっぱいある時でもニコニコしていなさい、と彼は言うのです。このことの根拠を彼はこう表現しています。

「人は幸福だから笑うのではない。笑うから幸福なのだ」
アラン『幸福論』より

これは私の一番好きな言葉です。おいしいものを食べてニコニコしているならば、猿でもできる。でも、辛い時や疲れた時でもニコニコするのが、意思と知性をもった人間の尊厳だと思うのです。あなたも常に笑顔を保てるように、ちょっと鏡の前で笑顔をつくってみてください。

「パフォーマンス心理学シンプルレッスン」8月のおさらい
Lesson4【自信】 http://woman.president.jp/articles/-/472
Lesson5【勇気】 http://woman.president.jp/articles/-/490
Lesson6【リラックス】 http://woman.president.jp/articles/-/509

佐藤綾子 パフォーマンス心理学 博士

常に女性の生き方を照らし、希望と悩みを共に分かち合って走る日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーカウンセラー。日本大学芸術学部教授。「自分を伝える自己表現」をテーマにした単行本は180冊以上。近著に『非言語表現の威力 パフォーマンス学実践講義』がある。