保育園開園反対は理に適っているか
保育園の開園に反対するなら「子どもの声がうるさい」とか「送り迎えの親たちが迷惑だ」など生活環境の侵害でないと理由にならないのではないか。目黒区に不満なら、徹底的に抗議して区長に謝罪させるなり慰謝料を請求するなりすればいい。
目黒区と保育園運営を任されたブロッサム社の態度、園と公園との距離を理由に、保育園を開園するなというのは、実は論理がつながっていない。できるだけフラットな視点でこの問題を取材してきたつもりだが、彼らの挙げた問題点は、客観的にみて反対する理由になっていないと結論づけた。
角野氏と中森さんにもう一度取材をお願いした。目黒区の担当課長に会ったら保育園開園のための住民説明の不備は反省していた、と伝えたが、だから許すとは当然言わない。むしろ、保育行政のプロが手順を誤ったとは何事かと言う。
さらに、言ってみた。「意見書をじっくり読んで気付いたのですが、ここには保育園開園に反対する理由は書かれていないんですよ」。生活環境の侵害などが反対する理由ではなく、目黒区に腹を立てているなら、保育園開園とは別に抗議し続ければいいのではないか、とも言った。
角野氏は落ち着いて「あなたがそう言うのも一理でしょう」と受けとめてくれた。だが「意見書に書いてあることがすべてです」と言う。保育園開園を話し合ってもいいのだが、その前にまず開園計画を白紙に戻せというのが自分たちの主張だと、言い分は変わらない。
中森さんは特に公園との距離を問題にする。さらに「実は私は、公園まで実際に歩いてみたのですが、“概ね5分以内”に当てはまる距離でした。厳密に徒歩5分か、大人の足か子どもの足かは、大きな問題ではないと思います」と言った。実際、東京都の規定では公園までの具体的な距離は定められていない。だが中森さんは、保育園の基準なのだから子どもの足に決まっているし、その他にも環状7号線から車が意外に多く流れてくることや、建物が狭いなどの点で、保育園にふさわしい場所ではないと主張し続ける。でも適しているかどうかは行政が決めることでしょうと私は言った。