これまで事業部という商社のイメージ通りの部署にいた私にとって、毎日が悩んでばかりの仕事でした。事業部門というのは、世の中に価値のあるものを生み出して、その価値が認められれば適正なリターンが戻ってくるわけです。一方で労働組合の仕事は、社員一人ひとりにとって何が価値あるものなのかが変わるんですね。
その2年間で、私は会社や仕事というものの本質の一端に触れた気がしたんです。
専従になるといろんな立場の社員から、相談や悩みごとを聞くようになります。社員の多様な声を聞いていると、人の活躍には、その人の意識や意欲のみならず、会社の用意している仕組みや施策、上司や周囲との関係性も大きく影響する、と実感します。
本当は力のある人でも、会社の制度や上司とのコミュニケーションの歪みによって、それを発揮できないことがある。逆に言えばそれを少し取り除くだけで、力を大きく発揮できるようにだってなる。
商社というのは人がすべての組織です。その能力を1%でもさらに発揮できるようにすれば、6000人もの社員がいるわけですから、とても大きな効果があるはず。そのことを実感する仕事に携わったことは、事業部でただただ突っ走っていた私にとって、会社というものの見え方が深まる体験でした。