日常の幸せを積み重ねていく

やり方は極めて簡単です。あらゆる「数字」を気にしない――コレだけです。

数字はひと目で「何点」「何番」と分かり、容易に人と比較可能な記号です。従って、1でもいいからついランクを上げたくなってしまう。

しかし、東大を一番で出た人が必ずしも会社で1番にならないように、TOEIC800点以上でも英語が喋れない人がいっぱいいるように(これはまた違う話ですかね)、売り上げナンバーワンの化粧品が必ずしも自分の肌に合うとは限らないように……上位だからいいというほどのことではありません。

ですから、「今自分はこの集団で一番イケてる」とか、あるいは反対に「自分が一番不幸」などといった考えはひとまず棚におく。

そして、今の生活のなかで、一つ一つ豊かな記憶を静かに積み重ねる。

たとえば、友達と映画を見に行き、馬鹿笑いして帰ってくる。本屋で、お気に入りの1冊を見つけて、これまたお気に入りの紅茶を好きなカップに入れて飲むなどのどうということもない時間。スポーツ好きの人なら、仲間とわかちあった練習なども、後から振り返ってみれば全部、豊かな経験といえるのではないでしょうか。

足るを知る――ではありませんが、人から地味といわれようがなんだろうが、日常の中でふっとそんな満足を得られる人は、十分、幸せといえるのではないでしょうか。

会社員はただでさえ、会社から数字目標を与えられ、それに縛られています。ですから、自分の人生くらい、数字から開放されて、自分らしくいきたいものです。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。