■編集部より指令

働きながら、結婚して、出産して、子育てしてという生き方が礼賛される時代。けれど、結婚しない道を選ぶ人ももちろんいます。

幸せになれる独女の条件とは?

■大宮冬洋さんの回答

幸せな独身アラフォーの共通点
http://president.jp/articles/-/13906

■佐藤留美さんの回答

「息子が作ってくれたサラダです」

それはズバリ、自分と誰かとを比較することをやめることではないでしょうか?

反対に、人と自分の境遇を比較し、自分の幸福度を確認しているうちは、なかなか充足感を得られないと思います。

特に、現在はこのSNS時代です。人と自分とを比較し易い仕掛けが、いたるところに、張り巡らされています。

たとえば、独身のアラフォーで今日もしこたま残業してしまった……なんて日。帰りの電車のスマホで、ふっとFacebookやTwitterを開く。

すると、かつての同級生が、「息子が作ってくれたサラダです」がどうだの、七五三がどうだっただの、家族で海外旅行に行って日焼けしちゃっただのどうでもいいことを写真付きで、これでもかとばかり押し付けてくる。

そんな時、残業疲れしたアラフォー独身女は、「あああ」と小さなため息をつく。そして、もはや万年クマが消えなくなった自分の顔が映し出された電車の窓を見て、再度ため息……。

挙げ句の果てには、私は、どうして「こっち組」に行けなかったのか、あるいは、行かなかったのか、悩んだりするのです。

子持ちだって満たされている人ばかりじゃない

しかし、働きながら、結婚して出産して子どもがいる、「全てを得た女」だって、よくよーく話を聞いてみれば、そんなに満たされているとも言えないことがほとんどなんですけどね。

実は、会社に居場所がなくて悩んでいたり、子どもが保育園になじめなかったり、息子の成績が妙に悪かったり、あるいは旦那との仲がしっくりきていなかったり……。同じタワマンの隣のママと揉めていたり。

でも、Facebookにはそんなリアルは1行も出てきません。

だから、外野からは「全てを得た幸福な女」としか見えず、つい嫉妬してしまったりするんです。

まあ、人の不幸はさておいて……。

人と比較しないコツについて、私なりの方法をお伝え致します。

ちなみに、これは、患者の悩みをいつも聞いている精神科医の兄直伝。

私があまりに人と自分を比較しては落ち込む嫌な性格のため、“治療法”を提示してくれました。

日常の幸せを積み重ねていく

やり方は極めて簡単です。あらゆる「数字」を気にしない――コレだけです。

数字はひと目で「何点」「何番」と分かり、容易に人と比較可能な記号です。従って、1でもいいからついランクを上げたくなってしまう。

しかし、東大を一番で出た人が必ずしも会社で1番にならないように、TOEIC800点以上でも英語が喋れない人がいっぱいいるように(これはまた違う話ですかね)、売り上げナンバーワンの化粧品が必ずしも自分の肌に合うとは限らないように……上位だからいいというほどのことではありません。

ですから、「今自分はこの集団で一番イケてる」とか、あるいは反対に「自分が一番不幸」などといった考えはひとまず棚におく。

そして、今の生活のなかで、一つ一つ豊かな記憶を静かに積み重ねる。

たとえば、友達と映画を見に行き、馬鹿笑いして帰ってくる。本屋で、お気に入りの1冊を見つけて、これまたお気に入りの紅茶を好きなカップに入れて飲むなどのどうということもない時間。スポーツ好きの人なら、仲間とわかちあった練習なども、後から振り返ってみれば全部、豊かな経験といえるのではないでしょうか。

足るを知る――ではありませんが、人から地味といわれようがなんだろうが、日常の中でふっとそんな満足を得られる人は、十分、幸せといえるのではないでしょうか。

会社員はただでさえ、会社から数字目標を与えられ、それに縛られています。ですから、自分の人生くらい、数字から開放されて、自分らしくいきたいものです。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。