女医のワークライフバランス
最後に、私のいる救急部は確かにまだ女医さんが少ない職場ではありますね。そもそも医師という仕事自体、例えば産休をとって現場を一度離れると、とても戻り難いという面があるんです。技術が日進月歩で、1年前の治療がもう古くなっていたり、使っていた薬が変わったりするので、復職の際にどうしても躊躇してしまうわけです。実際、研修医のときに結婚したり産休をとったりしてはいけないのではないか、と悩みを抱えている若手も多いです。
その意味では救急医は、交代の時間が来れば次の人にきっちりと引き継いでいくという仕事の流れがあります。シフト通りに働けるので、本来はむしろ家庭を持つ女性に向いているはずなんです。実際に海外ではドラマにもあるように、女医さんが本当に多い。日本ではまだまだ職場環境に不安なところがあるけれど、慈恵医大でも病院をあげて復職支援をがんばってくれています。学会のテーマとしても女医のワークライフバランスについては盛んに議論されているので、少しずつでも変わっていくことを期待しています。
●手放せない仕事道具
聴診器。これは学生時代に一番最初に買ったものなんです。比較的値段の安いタイプですが、恩師には「大事なのは道具ではない。聴診器と聴診器の間だぞ」と言われてきました。頭を使えということですね。
●ストレス発散法
温泉、旅行
●好きな言葉
苦しいことも嫌なこともかならず将来の糧になる
1981年生まれ。2006年に旭川医大を卒業。06年から札幌渓仁会病院、09年から11年までは沖縄の県立北部病院に勤務する。その後、ハワイ大学医学部シミュレーションセンター研究助手、2013年1月から慈恵医大救急部に勤務。
稲泉 連=構成 向井 渉=撮影