相手を理解して初めて自分も理解される

私が三菱電機の中で歩んできた歳月は、会社の中で女性が1人の個人として評価され始める黎明期だったと感じます。昔は男性社員が「営業的なセンスがあるタイプ」「こつこつと地道な研究をするタイプ」と個性を評価される一方、女性社員はひとくくりにされてきたところがありました。

だから、その先陣を切っている私が商品企画で結果を出していると、女性社員はみな商品企画が得意だと勘違いされてしまったものです。「平岡さんができているのだから、あなたも同じようにできるでしょう」と言われた後輩が、相談に来ることもありました。それが部署のミスマッチを生み、結局は彼女たちが辞めていってしまう。それはとても残念なことでした。説明が得意な人もいれば、口下手だけれど製品の機構的な分野が得意な人もいる。それは男も女も変わりません。

いま製品化技術開発部の部長という立場として働いていて思うのは、そうした個々の能力や個性が集まり、お互いを尊重し合うことで初めて、豊かな組織というものは育っていくのだという実感です。

「あの人はがんばっている。得意なことだけではなく、弱点も努力をして補おうとしている」という働き方を多くの社員がしていれば、お互いを認め合う雰囲気が出来上がっていくものです。私たちは家電メーカーですから、結婚や産休、育休を女性がとることだって会社にとっての重要な能力。相手を理解することで、自分も初めて理解されるという関係性を大切にしながら、今後も自分の役割を仕事の中で果たしていきたいですね。

●手放せない仕事道具 手帳
「お客様の声や声にならない要望を掴んで商品開発に生かすのが仕事だから、自分の目と耳が仕事道具」という平岡さん。強いて撮影できるものを挙げるとすると、気づいたことを書きとめる手帳なのだそうです。


●ストレス発散法 食べて飲んでストレス解消。

●好きな言葉 理解してから理解される(『7つの習慣』より)

平岡利枝(ひらおか・としえ)
1962年静岡県生まれ。85年、東京女子大学文理学部卒業後、三菱電機入社。静岡製作所冷蔵庫製造部技術課へ配属。2004年、冷蔵庫製造部先行開発グループマネージャー。08年より現職。切れちゃう冷凍、ビタミン増量冷蔵庫、瞬冷凍などのヒット商品を開発。「日経WOMAN」誌主宰「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2006」ヒットメーカー部門2位、総合ランキング9位。4月から副センター長への就任が決まっている。

稲泉 連=構成 向井 渉=撮影