紅一点は、チャンス!

ただ、そうした「当たり前」を実現するためにたくさんの力が注がれる当時の現場では、「冷凍してあるお肉が切れたら便利だよな」といった生活者の素朴な発想がなかなか出てこないものなんです。冷凍庫の温度は低ければ低いほど食材が長持ちするのだから、それを突き詰めるのが技術、という真っ直ぐな考え方が主流になっていくからです。実際に切れる冷凍を提案したとき、「どうして切れることがそんなに大事なの」という感想が多かったのもそのためです。

私が入社した頃はスーパーにも男性がほとんどいませんでした。同じ情報に取り巻かれていても、感じ方はその人の過去の経験や環境によって変わってきます。当時の電子レンジは解凍が上手くできなかったので、お肉に火が通り過ぎないように何度も「弱」で解凍していました。それを煩わしいと感じる主婦の気持ちに注目できたのは、私が男性ばかりの職場にいる唯一の女性だったからのように思うんです。

その意味で気付いたのは、男性ばかりの部署への配属は、女性にとってのチャンスでもあるんだということでした。確かにそうした職場の中にいると、女性は男性よりも期待されていないな、と感じる瞬間があるかもしれません。私の時代は特にそうでした。

でも、それを「期待されていないのなら、このくらいでいいや」と悪く取っていては悪循環です。むしろ期待の低さを逆手にとって、プライドを持って結果と成果を出していけば、思わぬ高い評価を得られることにもつながるかもしれない。今も採用をしていると女性が職場に少ないことを気にする学生さんがいますが、女性が少ないことは得意なことを活かして自分の仕事を確立できるチャンスでもある。そんなふうに考えてほしいです。