東京ばな奈は「定番」なのに、なぜ古くならないのか
選ばれる理由と、価値の届け方を確認
ここで4P(マーケティングミックス)まで踏み込んで見てみると、選ばれている理由の仮説をより具体的に理解することができます。4Pは要素を並べるだけでは、「定番商品も出しているし、限定商品も出している」という当たり前の話で終わってしまいます。
そこで、先ほどの4つの顧客層ごとにどのような価値提供をしているかをまとめて整理し直してみました(図表7)。
4つの顧客層の4Pを比較すると、年齢による違いよりも、「定番を選ぶか」「限定・コラボを選ぶか」によって、商品や売り方に違いがあることが見えてきます。
そこで、ここからは「定番」と「限定・コラボ」の2つに分けて、4Pを見ていきます。
商品(Product)では、定番の「東京ばな奈『見ぃつけたっ』」が、個包装で配りやすく、誰に渡してもわかりやすい商品として設計されています。一方、限定フレーバーやIPコラボでは、味だけでなく、パッケージやキャラクターとの組み合わせ自体が選ぶ楽しさになっています。
価格(Price)でも、定番では「何人に配るか」を考えて箱の大きさを選びますが、限定商品では「この商品を買いたい」という一箱の体験として価格が判断されます。
売場(Place)は、東京駅・羽田空港・品川など、旅行や出張から「帰る直前」に買いやすい場所を押さえる一方、限定商品では、旗艦店や期間限定店など、わざわざ足を運びたくなる売場をつくっています。
プロモーション(Promotion)も同じです。定番商品は「東京ばな奈」という名前を見ただけで東京土産だと伝わる安心感があります。一方、限定商品はSNSやファンの発信を通じて、「今しか買えない」「こんな東京ばな奈もあるんだ」という話題を生み出しています。
つまり東京ばな奈は、4つの顧客層の異なる「選ぶ理由」に応えながら、4P全体で2つの価値をつくっています。定番商品では、「外さない安心感」。限定・コラボ商品では、「ちょっとした発見」。この2つを同じ「東京ばな奈」というブランドの中で両立させていることが、幅広い世代や目的で選ばれ続ける理由の1つだと考えられます。
東京ばな奈の強みは、定番商品で「外さない安心感」を保ちながら、限定商品やコラボによって、新しく選ぶ理由をつくり続けていることです。
東京駅や空港では、いつもの東京ばな奈の隣に、限定フレーバーやコラボ商品が並んでいます。定番を買いに来た人が限定商品を見つけ、限定商品を目当てに来た人が定番商品にも触れる。顧客に合わせて商品や売り方を分けながら、売場では互いが行き来できるようになっているのです(図表8)。
競合と比べると、この特徴がさらにわかりやすくなります。昔からある東京土産は、誰もが知っている「定番」である一方、大きく変わらないことにも価値があります。新しく登場するスイーツブランドは、「こんな商品があるんだ」という新しさがありますが、東京土産として広く知られるまでには時間がかかります。
東京ばな奈は、その間にいます。
「東京土産といえばこれ」という高い認知を持ちながら、限定フレーバーやコラボによって新しさをつくり続けている。
つまり、東京ばな奈は「変わらないから定番」なのではありません。変わり続けながら、定番であり続けている。