「男系男子」への固執が作った矛盾

なぜこんな制度になったのか。理由ははっきりしている。政府・与党などが、「女性天皇」を求める多くの国民の気持ちに背を向けて、伝統でもない「男系男子」限定ルールに固執したからだ。

しかも、皇位も宮家も男系男子しか継承できないなら、時代錯誤で道義的にも認められない「側室制度」とセットでしか、皇室を維持できない。

次世代の皇位継承資格者がたった1人という目の前の「皇室の危機」をもたらしたのも、一夫一婦制で少子化なのにミスマッチな男系男子限定、という“構造的な欠陥”が原因だ。

にもかかわらず、政府は一部の男系固執派の反発をおそれて、危機の本当の原因には手をつけなかった。そのため、最優先すべき「安定的な皇位継承」という課題から、逃げ出すほかなかった。

だから、まともな制度になるはずがない。

旧宮家養子制度という「貴族制」

改正法では、戦後80年近く一般国民として暮らしてきたいわゆる「旧宮家」系の民間男性が今後、子々孫々に至るまで、その家柄・血筋=門地もんちだけを根拠として、ほかの国民には禁止されている皇族の養子になることを“例外的”に認める仕組みを、当事者の意向も確かめないで勝手に作った。

その養子縁組が成立すれば、皇族との婚姻を介することなく、“特権的”に皇族になることができる。その上、結婚すれば妻や子どもはすべて皇族で、男子が生まれたら皇位の継承資格までもつルールだ。旧宮家養子制度は憲法が禁じる“貴族制”を創設したに等しい。

これに対して早速、家柄・血筋=門地による差別を禁止した憲法(第14条)違反にあたるとして、10月26日に訴訟が提起された。原告は漫画家の小林よしのり氏だ。同氏は当日の記者会見で「旧宮家という特殊な階級をつくることで、日本に新たな身分制ができるのは大問題だ」と主張した。

今回の訴訟では「憲法第1章『天皇』という日本国憲法上最も基幹的かつ例外的な制度に関わる法改正に対する違憲審査」(訴状)を求めている。ここで裁判所が、原告本人に具体的な権利侵害が希薄などとして憲法判断を回避した場合、今後も国会で違憲の立法が繰り返され、歯止めがかけられなくなるおそれがある。そうすると、わが国の憲法秩序は根幹から揺らぐことになろう。