「養子」にかかるさまざまな重圧

そもそも、親の代から国民だった者が「養子縁組」によって皇族になり、その子に皇位継承資格まで認められた前例は、まったくない(宮内庁書陵部編纂『皇室制度史料 皇族 一』ほか)。明治の皇室典範でも現在の皇室典範でも、養子自体が禁止(!)されている。旧宮家養子制度は、皇室の歴史と伝統に照らして正当化できる根拠がないのだ。

さらに、養子縁組は一般に当事者の希望(自由意思)により、本人たちの利益を目的とする。ところが改正法では、当事者の意思や利益とは無関係に、もっぱら「皇族数の確保」を目的とし、その“手段”として養子制度を新設した。

このような制度設計の下では、養子縁組の成立に向けて当事者に有形無形の圧力がかかり、強制を避けにくい懸念がある。現に、すでにYouTubeなどで名指しに近い形で、対象者に対して養子に名乗り出ることを強要するかのようなメッセージも、発信されている。

この制度に対しては、天皇陛下や上皇陛下、秋篠宮殿下などが違和感を抱いておられることが、すでに伝わっている。そのような中で、養子を迎え入れる養親となる皇族が現れるか、どうか。もし現れた場合、皇室の中に分断が生まれかねないだろう。

「養子と養親が同居しない」が生む問題

宮内庁は、養子は養親と同居することが望ましいが、その義務はない、との考えを示している(共同通信10月22日配信)。これは驚きだ。“親子”になっても共同生活をしないなら、養親は単なる“名目”にすぎないではないか。

15歳以上の養子が皇室に入って、妃殿下の時の“お妃教育”のような簡単な座学は当然、行うだろう。しかし、皇族と生活を共にしないで、どうやって皇族としての心構えや作法、常識を身につけ、皇室の一員としての責任感や使命感を心に刻むことができるのか。

皇族という身分の重さを見くびっているのではないか。

しかも、養親と同居しない場合は、どこに住むのか。赤坂御用地に新しい邸宅を建てるのか。独立して生活するなら、養親とは別にお世話の宮内庁職員と警備の護衛官が何人か(通例だとそれぞれ5人ほど)配置されることになろう。

赤坂御用地の略図
赤坂御用地の略図(出典:宮内庁ホームページ)

独立した生計を営むなら、皇族費も「王」という身分に対して親王の7割(2135万円)が支出される。