崖落ちパターンに共通すること

家計再建の場面で、必ず出てくる選択があります。

それは――

「今の生活水準を守るか」
「将来の破綻を防ぐか」

という問題です。

柴崎さんもこの例に漏れませんでした。

美智子さんとの思い出がたっぷり詰まったマンションや環境、習慣へのこだわり。確かにそれらは、決して否定できるものではありません。

しかし現実問題として、それが柴崎さんの生活を圧迫していたことも事実です。

そして何より、

「このままでは破綻するかもしれない」

という不安から解放されたことが、精神的に大きな支えとなりました。

さまざまな崖落ちパターンに共通するのは、世間や誰かの価値観に振り回されている人々の姿です。

崖から落ちそうな人の手をつかんで助けようとするロッククライマー
写真=iStock.com/VAWiley
※写真はイメージです

「今の生活水準を守らなければ」という価値観も、自分自身ではなく、周囲や世間の視点を意識したこだわりにすぎません。

そこから解放されることこそ、幸福な人生の第一歩ではないでしょうか。

住宅の問題は、突然破綻するのではなく、ゆっくりと逃げ道を塞いでいきます。

だからこそ必要なのは、

「まだ大丈夫なうちに動くこと」

これに尽きます。

「動けるうちに動いた人だけが、老後を守れる」のです。

これは、私がこれまで見てきた多くの相談者に共通する現実です。

【柴崎さんの「崖落ちポイント」】

① 住宅ローンの完済=住居費ゼロと考えていた

・管理費や修繕積立金、税金といった継続コストを軽視していた。

② 会社の存続と退職金や再雇用収入を楽観視していた

・企業業績による、退職金の減額や雇用条件のリスクを織り込んでいなかった。

③ マンションの出口戦略を持っていなかった

・売却か賃貸かといった選択肢が現実的に取れない状況に陥ってしまった。

水上 克朗(みずかみ・かつろう)
ファイナンシャル・プランナー

慶應義塾大学卒業後、大手金融機関に勤務し、定年まで会社員として働く。56歳で出向による年収減少を経験したことをきっかけに、自身の老後資金や人生設計を見直す。その後、親の介護や病気、自身のケガなど、人生後半に訪れるさまざまな課題に直面した経験から、人生には「仕事」「投資」「年金」「介護・医療保険」「住宅」の5つの崖があることに気づく。現在、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、執筆・相談・講演活動を行う。相談実績は延べ1000件超。100歳までの家計シミュレーションによる「お金の見える化」を強みとし、老後資金、定年・再雇用、住宅購入、年金などの相談に定評がある。CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー。2023年日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。J-FLEC認定アドバイザー(金融経済教育推進機構)。NHK 「おはよう日本おはBiz」出演ほか、メディア掲載多数。著書に『50代から老後の2000万円を貯める方法』『見るだけでお金が貯まる賢者のノート』『老後破産しない選択』など。