「結婚は2年更新でいい」の利点
しかし、だ。その恐怖を乗り越えて、一生添い遂げる覚悟で結婚したとしても、現代では一定の確率で離婚する。だとしたら、本当に「一生の覚悟」なんて必要なのだろうか。
実は僕は、プロポーズのとき、妻にこう伝えている。「残念ながら、一生の誓いはできない。2年更新のつもりで結婚してほしい」と。
たぶん、これを読んだ大半の人が引いたと思う。大丈夫、妻もちゃんと引いていた。
だが、これは僕なりに真剣に考えた末の答えだった。そもそも僕は、それまでの35年間で、一生を縛る意思決定をしたことがなかった。
30歳で起業したときでさえ、共同創業者とは「とりあえず3年、寝食を忘れてやってみよう」という約束で会社を立ち上げた。だから、残りの人生をまるごと縛る長期契約に、簡単には踏み切れなかった。
そこで苦肉の策として出てきたのが、「2年更新」という発想だった。
これが、僕にはしっくりきた。期間を区切ったことで決断のハードルがぐっと下がったし、「2年後に更新を断られないように」という意識も働くようになった。
モラルハザードを生む“無期限”契約
あれから5年以上が経つが、少なくとも今の僕に、妻と離婚する気はさらさらない。おそらくこの2年契約はあと数十回更新され、最終的には一生ものの契約になるのだろう。
唯一の気がかりは、いつか妻のほうから更新拒否を通告される可能性が、割と高いことくらいだ。
この考え方を恋人に話してどう受け取られるかは保証できないので、無理に伝える必要はない。だが、一生の決断に迷っている人には、この発想を強くおすすめしたい。
どれだけ一生の愛を誓っても、別れる時は別れるからだ。
それに、終身雇用と同じで、無期限の契約はモラルハザードを生む。一生離婚されないと思っているから、相手をないがしろにして傲慢になる。一生離婚できないと思っているから、冷え切ったまま仮面夫婦を続ける。
それよりは、2年ごとに更新される契約だと思って、お互い努力して関係を続けようとするほうが、よほど健全だ。
構成=大島七々三
東京農工大学工学部卒。在学中にブログ「がんばれ、生協の白石さん!」を開設し、書籍化された同作は発行部数約100万部を記録。2008年、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA社)に入社。ソーシャルゲーム事業の立ち上げに参画し、同社初のソーシャルゲーム『海賊トレジャー』をリリース。その後、カナダスタジオ立ち上げのためバンクーバーに赴任。2015年にDeNA社を退職し、株式会社Mrk&Coを共同創業、代表取締役に就任。北米でマッチングアプリが普及する一方で「マッチしても会えない」という課題を目の当たりにし、メッセージのやり取りを省いて飲食店でのデートを直接セッティングするアプリ「ダイン(現D3(ディースリー))」を開発。2016年に米国・カナダで正式リリースするとApp Store の「Best New Apps」に選出。2017年には日本でもリリースし、利用者を急速に伸ばした。2024年、Mrk&Co社の全株式を、「オリエンタルラウンジ」を運営する相席ラウンジ最大手の株式会社クラウドエヌに売却。2025年、同社の取締役に就任した。現在はマッチングアプリと相席ラウンジの双方の経営に携わる。
