地に足のついた生き方に共感する人々

筆者の上海の知人は娘とともに『映画ちいかわ』を観ていて、娘から「パパ、ここはどういう意味?」と聞かれたらどう答えようかと迷う難しいシーンが多かったというが、上映後に娘から何か聞かれることはなかったという。

知人は「娘は娘なりに、単純に割り切れることばかりではないというのがわかっているのではないでしょうか。映画でも答えが示されているわけではありませんが、ありのままに受け入れ、考えることが大事なのでは。それが『ちいかわ』の魅力でもあるのかなと思っています」と話してくれた。

中国、台湾、香港のSNSなどを見ていても「ちいかわの世界観に共感した」「明日から勉強をがんばる。無駄なことなんてない」と前向きになるコメントが多かった。

世界では戦争や国家間の諍いが起こるなど、不穏な出来事があまりにも多い。とくに中華圏では景気の悪化や競争の激化などがあり、日本人以上に厳しい生活を送っている市井の人々がいる。そんな不確かな時代だからこそ、ハードな労働をしながら、日常の中に小さな幸せを見つけようとする、地に足のついた「ちいかわ」的生き方に共感する人が多いのではないだろうか。

中島 恵(なかじま・けい)
フリージャーナリスト

山梨県生まれ。主に中国、東アジアの社会事情、経済事情などを雑誌・ネット等に執筆。著書は『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日経プレミアシリーズ)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか』(中央公論新社)、『中国人は見ている。』『日本の「中国人」社会』(ともに、日経プレミアシリーズ)など多数。新著に『中国人のお金の使い道 彼らはどれほどお金持ちになったのか』(PHP新書)、『いま中国人は中国をこう見る』『中国人が日本を買う理由』『日本のなかの中国』(日経プレミアシリーズ)などがある。