台湾の映画年間ランキングでトップ10入り

同様の現象は台湾でも起きている。台北でも7月4日から9月27日まで「CHIIKAWA DAYS」が開催されており、7月末に公開された同映画も大ヒットしている。

台湾の現地報道によると、9月時点で台湾全土の興収は1億5000万台湾元(約7億4000万円)を突破。動員数は9月上旬の段階ですでに約53万7000人を超えており、台湾の今年の映画年間興収成績ランキングでトップ10に入った。台湾では従来から日本映画の人気は高いが、公開から2カ月ほどでのトップ10入りは異例だ。また、台湾における歴代邦画興行収入ランキングでも上位にランクインしている。

なぜ、これほどまでに「ちいかわ」は東アジアの中華圏の人々を惹きつけるのか。

そもそも、「ちいかわ」とは、「なんか小さくてかわいいやつ」のことで、イラストレーターのナガノ氏が作り出したキャラクターだ。不器用で泣き虫の「ちいかわ」、その友だちでポジティブな性格の「ハチワレ」、そして「うさぎ」などが労働したり、困難に直面しつつも、お互いを思いやり、問題を解決していくというストーリーだ。

2020年にX(旧ツイッター)で連載が始まるとすぐに人気に火がつき、アカウントのフォロワー数は570万人以上に成長した(2026年10月現在)。まるまるとしたかわいい見た目、映像の美しさなどから夢中になる子どもが多いが、内容は意外にシビアだ。ただかわいいだけのほのぼのとした「子ども向け」アニメではなく、複雑な人間社会につながる深いストーリー性がある。

中華圏でウケている本当の理由

そもそも、「ちいかわ」たちは毎日遊んで暮らしているわけではなく「労働」している。しかも、草むしりやシール貼りといった地味で労働集約的な仕事だったり、モンスターを討伐するという危険が伴う仕事だったりする。

かわいい、ほのぼのキャラに似つかわしくない苦しい仕事をしているという点だけでも、これまでのアニメに類似したものは少なく、異色だ。そんな内容に、自分自身の苦しい会社員生活を投影させる「隠れちいかわファン」の日本人の中年男性も少なくない。

それが中華圏でウケている理由にも少し関係しているように感じられる。よく知られているように、中国、台湾、香港などの中華圏は生まれてから死ぬまで競争の連続だ。とくに中国の若者の間では受験戦争と就活戦争が激しい。

受験戦争は随から清まで1000年以上続いた「科挙」の時代からの伝統だ。就活を勝ち抜くには資格を取得したり、公務員試験の勉強をしたりしなければならない。それが、「ちいかわ」に出てくる草むしり検定に酷似している。検定試験に合格すれば報酬がアップするという点も似ている。中国では出身大学によって初任給に大きな差が出るので、地道な努力をしなければならないのだ。

教室で試験を受ける学生
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