常連客がフランス語で話し出した理由
隣のテーブルがざわめいています。「あのふたりはいったい何者?」というわけです。「彼女は英語がわかるみたいだからフランス語で話しましょ」と、フランス語に切り替えました。この状況でフランス語になったら陰口を言われていると覚悟しましょう。でもフランス語も聞こえちゃうんです、わたし。
「日本人なのに英語がちゃんとしている」
「服装もましね」
「パールつけてるし」
「ナプキン、ちゃんと使えるのかしら」
「食べ終わったカトラリーを縦に置いてる!」
「食後にハーブティーを頼んでるわ!」
わたしたちは常連さんたちのテーブルの真ん中に入れられたのです。
わたしたちがランチをいただいている間に、リュックを背負ったアメリカ人のふたり連れが入ってきました。予約はしていなかったようです。「ここはおいしいって聞いていたから、一度食べてみたいんだけど」と言って。
席は空いているのですが、応対した店の人はまず彼らのいでたちを上から下まで見て、「今テーブルは空いていないけれど、いちばん端っこのドアの前ならご用意できます」と言っています。ドアを開けたらぶつかってしまいそうな場所です。
普通なら「レストランから断られているな」と察して帰ってもいいと思いますが、彼らは「そこでいいです」って、座ってしまいましたが。
「ウィルトンズ」を出たとき、息子は「もう疲れた〜!! 二度と来ない」と言っておりました。
一言注意しただけなのに
やはり息子といっしょにレストランに行ったときのことです。ロンドンのカジュアルなレストランへ、ランチに行きました。
案内されたテーブルの真上に、植物の装飾が下がっていました。わたしたちが食事をしているのに、レストランの人がその植物を棒で動かそうとするので、「今食べているんだからやめて」って言ったんです。ホコリが落ちるでしょう?
食事が終わってレストランを出るときに「Thank you.」と言ったら、「No. You are not thank you.」って返されました。わたしがひとこと注意をしたことに対して、「感謝なんかしていないなら、サンキューって言うな」というわけです。
英国では、意地悪や皮肉に負けない自分を保たなければならないと思います。
ヨーロッパ、日本の食卓史、及び礼法の研究家。神戸生まれ。英国、ザ・イーストボーン・カレッジ卒業。大学内ル・コルドンブルーのシェフ資格取得。1988年、神戸にて「ザ・クイーンズ・フィニッシングスクール」開校。プロフェッショナルを対象とした、英国及びフランスのディナー、サヴォイア式食卓のサービスを指導。「志摩観光ホテル ザ ベイスイート」建設チームメンバー。皇室及び宮家のサポート。ミシュランUK&アイルランドのサポート。「ザ・ペニンシュラ東京」アンバサダー。NHKの番組で英国のライフスタイルを紹介する。『食卓への招待 テーブルセッティング&マナー』(講談社)など著書多数。
