生徒が税関を通れなかった「残念な理由」
つい最近、教室の生徒さんたちを連れてロンドンに行った帰りの空港でのことです。ひとりの生徒さんが、税関で止められてしまいました。書類は完璧に揃っているのに、どうしても判を押してくれないというのです。生徒さんがわたしに助けを求めました。
わたしがその場に行ったら、判を押さない担当者は隠れてしまって出てきません。その場にいた職員に最上級のていねいな英語で、「彼女がこちらを通していただけないと申しておりますが、見たところ、書類に不備はないと思います。何か手違いがあったと思われます。お時間をいただいて申し訳ないのですが、もう一度ご担当の方か、上の方にお話をさせていただけるとうれしいのですが」と言いました。
隠れてしまった担当者の代わりに、しかたなく上司が出てきて書類をチェックすると、判を押さないのは担当者の意地悪だということに気づいたのでしょう。「書類の書き方がわかりにくかった」などと言い訳をしながら、判を押して通してもらえました。「そうですか。今後気をつけていただけますか」と最後に釘を刺しておきました。
そういうとき怖いのは、激しい言葉で抗議すると、警察が来てしまうんです。英語の中でも、クイーンが使うようなていねいな英語できちんと話せば、もう反論できないのです。
老舗レストランにいまだ残る階級意識
ですが、言葉やマナーが完璧になったからといって、まだまだ気を許してはいけません。
ロンドンに、英国貴族が大好きな「ウィルトンズ」という英国伝統料理のレストランがあります。1742年に創業した老舗で、なかなか予約のとれない人気レストランです。息子が予約の電話を入れたら断られたというので、わたしがかけ直しました。わたしの話す英語が19世紀のクイーンズ・イングリッシュだったので、電話の相手もおもしろがって、なんなく予約できました。
格式のあるレストランでは、ゲストがオーダーしていい人、話しかけていい人、話しかけてはいけない人がいます。ほかのテーブルを片付けている人に話しかけてはいけません。インヴィジブル、見えない人だから。話しかけられた人はクビになってしまいます。「目立つように動いてしまったから」
「ウィルトンズ」は、そういう階級意識が歴然と残るレストランです。
息子といっしょにランチに行きました。中央にあるテーブルに案内されました。まず、こちらのオーダーを試されます。
スターターとしてドレストクラブ(蟹の冷菜)、メインにローストビーフ、デザートにトライフルを注文しました。ドレストクラブのときにパンがサービスされます。スターターを食べ終わって、パンをひくときに「May I ?(よろしいですか)」って尋ねるのです。英国では、メイン料理のときにはパンを食べません。ですから、スターターが済んだら、残ったパンもいっしょにひくのですが、そのときにわざと「May I ?」って聞いてきたのです。
「あ、試してきたな」と気づいたので、「Of course, thank you.」って答えました。「Of course」、つけてさしあげました。