※本稿は、赤井誠、田口和裕『Claude Cowork × Microsoft 365 Copilot Cowork実践ガイド』(日経BP)の一部を再編集したものです。
文章作成は速くなった。それでも忙しい理由
チャットAI(AIアシスタント)が登場した当初、多くの方から聞いたのは、「思ったほど作業が速くならない」「便利ではあるが、面白いツールの域を出ない」という声でした。そして利用が広がり、日常業務の中にチャットAIが定着し始めると、今度は「AIを使っているのに業務があまり楽にならない」という声を耳にするようになりました。なぜでしょうか。
もちろん、チャットAIによって文章作成や情報収集の効率は向上します。しかし、多くの人が1日の時間を使っているのは、それだけではありません。生産性を制約している本当の要因は、個人の作業スピードだけではなく、本来は任せられるかもしれない業務まで、私たち自身が抱え込み続けていることにあるのではないでしょうか。
朝、出社してから退社するまでの1日を思い返してみてください。出社後のメールやチャットの確認と返信、今日の予定や進捗、連絡事項の共有、ToDoリストの作成・更新、スケジュールの再確認、CRMツールへの入力、競合調査や業界ニュースのチェック。そして業務終了後の日報作成、交通費の入力、経費精算や勤怠管理など、毎日のように繰り返されるルーティン業務だけでも相当な分量があります。
私たちの労働時間の多くは、このような「誰かがやらなければならないが、必ずしも自分の手で行う必要はないかもしれない仕事」に費やされています。さらにチーム内での情報共有や調整、会議の準備やフォローアップなど、「一緒に働くこと」そのものにも多くの時間が使われています。
AIに相談するだけで終わっていないか
チャットAIは個人の作業を支援するツールでした。しかし、今登場し始めている新しいAIは、その一歩先を目指しています。単なる相談相手ではなく、業務そのものを任せ、共に成果物を作り上げる存在です。
その代表例が「Cowork」です。
Coworkは、個人の作業だけでなく、チームや部署が協力して働くプロセスそのものを効率化します。AIを単なるツールではなく、共に働く仲間として迎え入れ、人とAIが役割を分担しながら成果を生み出していく。本書が目指すのは、その新しい働き方です。
本稿で取り上げるのは、米Anthropicの「Claude Cowork(クロード・コワーク)」と、米Microsoftの「Copilot Cowork(コパイロット・コワーク)」という2つの新しいAIサービスです。名前の通り、どちらも「一緒に働く」ことを目的に設計された、いわば「AIの同僚」と呼べる存在です。
Coworkを仕事で使い始めると、「この作業もAIに手伝ってもらえるのではないか」と感じる場面が増えてきます。毎週のレポート作成、会議前の資料整理、長いメールやチャットの要約、定期的な情報収集など、日々の業務には同じ流れを繰り返す仕事が数多くあります。
こうした業務は、AIに任せやすい作業です。ただし、ここでいう「AIに任せる」とは、最終的な判断までAIに委ねるという意味ではありません。資料を読み、必要な情報を整理し、要点をまとめ、下書きを作成するところまでをAIが支援します。その結果を確認し、必要に応じて修正し、最終的な判断を行うのは人間の役割です。

