加入ルールはどう変わったのか
では、どう変わるのか。改正後の社会保険の加入ルールは、こうなります。
改正後(2026年10月以降予定)の新しいルール
一定規模以上の事業所で週20時間以上働く場合は、年収にかかわらず社会保険に加入する(学生でないこと、2カ月超の雇用見込みの場合)。
これまで「106万円」という年収で判断していたものを「週20時間」という働く時間で判断されることになります。
「年収の壁」が「時間の壁」に変わった、ということ。
壁を超えて社会保険に加入することになると、年収にもよりますが、年間16万円程度以上の社会保険料が自己負担になります(収入が増えれば負担も増えます)。
▽130万円の壁(これはそのまま残ります)
規模の小さい事業所や個人事業で働く場合、また週の労働時間が20時間未満の場合は、年収130万円(60歳以上は180万円)を超えると夫の社会保険の扶養から外れます。自分で国民健康保険と国民年金に加入すると、年収130万円で、約32万円(年)の負担(40歳以上の場合)が発生します(収入が増えれば負担も増えます)。
なお、「うっかり残業で130万円を超えそう」という心配を減らすため、2026年4月から判定方法が変わりました。労働契約上の年収が130万円未満であれば、繁忙期の残業などで一時的にその年収を超えても扶養から外れない扱いになります。
整理すると、改正後の「壁」はこうなります。
・週20時間以上、一定規模の会社で働く
→年収にかかわらず社会保険加入
・週20時間未満、または小規模事業所・個人事業で働く
→年収130万円が壁
改正後も、扶養から外れると、年間約16万円以上(国保・国民年金なら約32万円)の社会保険料の負担が発生するという事実は変わりません。
でも、それって、月に換算すると、1~2万円強です。
この金額のために、多くの女性がシフトを切り上げ、仕事を断り、昇進を避けているとしたら、これって本当にオトクなんでしょうか?
月1~2万円のために失っているもの
月1~2万円強を守るために、何を失っているのか。
東京都「東京くらし方会議」が発表した試算を見て、私も正直驚きました。
左の表をご覧ください。この試算は、妻の働き方パターン別に、世帯の生涯収入(給与+年金、89歳までの累計)を比較したものです。前提は、以下の通り。
夫の年収・年齢の条件はすべて同じ。妻は31歳まで夫と同じ年収で働き、31歳で出産したと仮定。
①の「フルタイムで継続して働いていた妻」と④の「出産後専業主婦」の世帯の生涯年収の差は、約1.9億円。
①と③の「パート勤務」の差は約1.6億円。
扶養に入ることで払わなくてすむ社会保険料の金額を、仮に35年分で計算すると約560万~1120万円。
扶養にこだわるということは、この金額と引き換えに、2億円近い将来の収入を手放していることといえます。
夫の条件はどのパターンでも同じ。ということは、この収入差は、妻の働き方だけによって生まれる差です。失っている2億円近い金額は、妻自身が稼げたはずの金額なのです。
「扶養がトク」というイメージが、いかに数字とかけ離れているかがわかります。
そもそも社会保険料を払うのは本当に損なのか、働き損にならない年収はいくらなのか。詳しくは本書に譲りますが、まずはこの数字を知ることが、「なんとなく損らしい」ではなく、自分の意思で働き方を選ぶ第一歩になります。
保険会社・財産コンサルティング会社、税理士法人等で税理士業務に携わる。開業独立している女性税理士の組織、ウーマン・タックス代表。テレビ出演や全国での講演、書籍の執筆などの活動も多数。著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)、『定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)など。
