高市首相や麻生副総裁が強く嫌うこと
唯一、子どものいない常陸宮家だけが養子を迎える可能性がある。常陸宮家を継げるのは一人だから、旧宮家からの養子の定員は「一名」になる。
常陸宮家に複数の養子が入り、一番年齢が上の人物が宮家を継いだ後、ほかの養子が別の宮家を設立することもないわけではないが、それはまったく想定されていない。
それに、養子に入ったからといって、すぐに皇族として活動できるわけではない。それは、何代か前の先祖に歌舞伎俳優がいる人間が、いきなり歌舞伎界に入り、すぐに舞台に立てと言われるようなものである。
天皇が記者会見で、皇族の果たしてきた重要な役割を強調したのも、そうしたことを見据えてのことだったはずだ。だからこそ「国民の理解が得られるもの」を、と強調したのである。
誰が、旧宮家から養子に入るのか。
それに世間の関心が集中してしまえば、その分、天皇や皇族の活動についての関心は薄れていく。すでに〈麻生太郎は「愛子天皇」を心底怖れている…"悠仁さまの資質"問題を避け続ける政権に国民が抱く強烈な違和感〉で述べたように、高市首相や、皇室典範の改正論議で中心的な役割を果たしてきた麻生自民党副総裁は、むしろ、天皇や皇室の活動が目立つことを嫌っている。
まして、愛子内親王へ国民が強い関心を持ち、「愛子天皇」待望論が高まることを強く警戒している。
“本丸”を隠しての皇室典範改正議論
そもそも旧宮家の養子案は、「女性・女系天皇」を阻止するために持ち出されてきたもので、皇族数の確保は本当の目的ではない。だからこそ、養子にともなうさまざまな問題が議論されていないのである。
すでに週刊誌などの取材に対し、旧宮家の人々は皇族への復帰は望まない、それは難しいと答えている。女性天皇でいいのでは、という声さえある。
これから将来にわたって皇位継承を安定化させるとともに皇族数を確保することは難題で、正解があるわけではない。
しかし、万が一、天皇不在の状況が生まれれば、日本の国の在り方は危ういものになる。それを防ぐためにも、天皇や皇室の在り方について根本からの議論が必要である。その際には当然、女性天皇や女系天皇のことも論じなければならない。
皇室典範改正を急ぐ政治家は、そうした議論を避けるために、男系男子での継承に固執し、なんとしても養子案を実現しようとしている。本心を隠しての議論だから、問題は続出する。
天皇がそれに怒ったとしても、何ら不思議ではないのである。
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。