皇室が外交に果たす役割の大きさ
そうした両国の関係を変える上で決定的に重要な役割を果たしたのが、現在の上皇夫妻が天皇皇后として2000年にオランダを訪れたことだった。夫妻は、戦没者記念慰霊塔に献花し、その際に1分間にわたって黙祷を捧げた。この光景はオランダ全土にテレビ放送され、新聞でも一面トップで扱われた。
上皇后は、このときのことを「慰霊碑は白夜に立てり君が花抗議者の花ともに置かれて」と歌に詠んでいる。その場には、抗議活動をするオランダの人々がいて、夫妻が献花した後、それに続いたのである(井上亮『比翼の象徴 明仁・美智子伝〈下巻 平成の革命〉』/岩波書店)。
こうしたことがあり、オランダの人々の反日感情は次第に鎮静化し、現在では両国の関係はかなり良好なものになっている。
オランダ王室の側も、2006年に、当時の雅子皇太子妃の療養のために、愛子内親王を含めた皇太子一家をオランダに招いている。その療養先が、今回滞在しているヘット・アウデ・ロー城である。しかも、天皇とオランダ国王は「水」の問題について関心を共有している。天皇は、先日台風6号が上陸する2日前に、東京・荒川の岩淵水門を視察している。オランダでも、国王とともに水関係の研究所を訪れている。
もしこうした経緯がなければ、サッカーの強豪国であるオランダが、格下の日本と引き分けたことで、騒ぎが持ち上がっていたかもしれない。皇室が外交という場面において果たす役割は、極めて大きいのだ。
旧宮家の養子案が生む「皇族予備軍」
11日の記者会見において、皇族数の確保についての議論に対する天皇の見解が求められたのは、最後の場面だった。
もちろん、天皇がそれに直接答えることは難しい。だから、制度に関わることについては、自分から「言及することは控えたい」と前置きしているわけだが、その発言に至る前段では、国際親善を含め、皇室の果たす役割の重要性が強調されていた。
天皇が、国民の理解ということを持ち出したのも、国会での議論において、そうした皇室の役割の重要性についての議論がまったく欠けているからである。
しかも、とくに保守派がその実現に力を入れている旧宮家の養子による皇族復帰の案は、あまりにも多くの問題を抱えており、とうてい皇族数の確保に結びつくようなものではない。そこに天皇も懸念を持っているはずだ。
どこが問題なのだろうか。
皇室典範が改正され、旧宮家からの養子が可能になると、そこに「皇族予備軍」が生まれる。それは将来において皇族になる可能性がある人々の集団である。そんな集団は、これまでまったく存在しなかった。
一般の養子の場合、養親より少しでも年齢が下であれば可能だ。夫婦でも養子に入ることができる。ということは、皇族予備軍には、旧宮家に属する人たちのほとんどが含まれるのだ。