旧宮家系民間人は「皇統に属さない」
④政府は、養子縁組の対象者は「皇統に属する男系の男子」と説明する。しかし、そこで想定される旧宮家系民間人も含めて、皇籍を離れた者はもはや“皇統に属さない”、とするのが近代憲法下での通説だった(美濃部達吉『憲法撮要 改訂第5版』昭和7年[1932年]など)。これはなぜか。
生物学的な意味で皇統につながる国民は、旧宮家系だけでなく桓武平氏や清和源氏、皇別摂家の末裔など、民間に数多く存在する。そのため、「現に皇族の身分にある」(戸籍ではなく皇統譜に登録されている)という事実によって“線引き”をしないと、民間人が幅広く皇位継承資格を主張できる余地が生まれるからだ。
それは、皇籍復帰をめぐる歴史上の望ましくない、わずかな異例を二度と繰り返さないための、法規範上の定義づけでもあった。
アナクロニズムが国民の拒絶感を招く
⑤皇室には、皇女でいらっしゃる敬宮殿下をはじめ、ほかにも佳子内親王殿下など5方の未婚の女性皇族が、現におられる。にもかかわらず、「男系」とか「男子」という差別的な理由だけで、名分上すでに“皇統に属さない”旧宮家系の民間人を養子縁組で皇室に迎えようとする。
そんなアナクロニズムなやり方は、多くの国民にとって拒絶感しか生まないだろう。
憲法が定める「世襲」とは天皇の血統=皇統による継承を意味し、その皇統には男性も女性も、男系も女系も含まれる、というのが政府見解だ(内閣法制局執務資料『憲法関係答弁例集(2)』ほか)。それとツジツマが合わない。
反天皇的な論者も呆れて次のように述べている。
「男系養子案のゴリ押しは長い目で見たら天皇制廃絶の第一歩になりかねないと発信、(それに対して)天皇制維持派から批判が来ると思ったら逆だった。むしろそんな天皇制はなくなった方がいいという反応が多くて驚いた。そこまでして維持する必要はもうないと」(原武史氏「サンデー毎日」令和8年[2026年]6月7日号)