皇室の「女系」へのご意思
安定的な皇位継承を目指すために欠かせない「女系天皇」について、残念ながら思考停止のまま脊髄反射的に反発する人たちがいる。しかし皇室ご自身は、現在の厳しい条件下で皇統の存続を図るために、女性天皇、女系天皇という選択肢が欠かせないことを、当事者として当然ながらしっかりと理解しておられる。
たとえば、長年、上皇陛下にお仕えし、平成時代を代表する宮内庁長官と呼ばれた羽毛田信吾氏が退官後、講演の場で「皇室に女性(皇族)が(ご結婚によって)いなくなれば、女系(天皇)に広げる選択肢はそもそもなくなる」と危機を訴えている(令和6年[2024年]3月15日)。
あるいは、同じく上皇陛下のお側近くで長くお仕えした渡邉允元侍従長も、次のように記者に語っていた。
「男系(だけ)の継承を主張するのは、皇室を途絶えさせることになる。女系(天皇)も認めるべきだ」(平成30年[2018年]1月9日)と。
これらの発言が皇室の方々のご意思と無縁のものであるはずがない。
小泉純一郎内閣当時、女性天皇、女系天皇を認める提言が示された場面で、記者が「皇室の伝統の転換になります」とネガティブに述べた。それに対して、上皇陛下ご自身は憲法上の制約がある中でも、(男系・女系にかかわりなく)「国民と苦楽を共にする」精神を受け継ぐことこそが「皇室の伝統ではないかと考えている」と、ポジティブにお応えになっている(平成17年[2005年]12月19日)。
これは天皇陛下や秋篠宮殿下のこれまでのご言動に照らして、皆さまが共有しておられるお考えだろう。
取りまとめは「安定的な皇位継承」と矛盾
ところが、「取りまとめ」の冒頭に見逃せない一文が挿入されている。
これは、政府有識者会議の報告書にあった内容を「立法府としても」追認したものだ。
しかし、今の皇位の継承順序は皇室典範の欠陥ルールによって規定された結果だ。だから、その継承順序を固定化することは、原因である「男系男子」限定=女性・女系天皇排除という欠陥の解消に、大きな制約を設ける結果をみちびく。
これは、附帯決議に盛り込もうとしている「安定的な皇位継承」と、真正面から矛盾・対立する。その事実に気づいていないのだろうか。
ただし、将来の国会が憲法の枠内で皇室典範を改正することに、あらかじめ範囲を限定する立法は不可能だ。だから、先の文章は単に心理的な効果しか持ちえないだろう。