「言葉を出してみよう」と自然に思えるゲームを紹介
ボードゲームやカードゲームなどのいわゆる「アナログゲーム」は、言葉力を育むうえで優れた環境をつくってくれます。家庭の日常生活での会話では、どうしても大人が主導権を握りがちです。「ちゃんと話しなさい」「結論から言って」と、知らず知らずのうちに正しさを求めてしまいます。
でも、ゲームの場では、大人も子どもも同じ立場です。子どもも大人も、自分の意思、自分の判断で行動しなければなりません。手伝ったり、手伝ってもらったりすることは基本的にありません。対等です。そして、時には子どもが大人に勝つことができるのが、ゲームの世界です。
言葉力を高めるために大切なのは、「言葉を出してみよう」と思える安心感です。ゲーム中、とっさに言葉を出す場面や、正解のない表現を求められる場面では、最初は戸惑うかもしれません。でも、笑いながら受け止めてもらえる経験を重ねることで、子どもの話す力が育っていきます。
また、ゲームでは、自分が話すだけでなく、相手の言葉を手がかりに考えたり、相手の考えを想像したりする場面が多く生まれます。「この人は、どういうつもりで言ったのかな」「どう受け取ったらいいかな」と考えることが、聞き上手への一歩になります。
子どもの言葉力を高めるために私がおすすめしたいのは、勝ち負けや速さだけを競うものよりも、言葉を介してやりとりが生まれるゲームです。協力したり、考えをすり合わせたり、あえて曖昧な表現を楽しんだりする中で、子どもは「自分の言葉が、相手にどう届くか」「相手の言葉をどうとらえるか」を体感します。そこにこそ、言葉力の土台があります。とはいえ、「このゲームを上達させよう」「言葉力につなげよう」といったことは、あまり考えないでください。ゲームはあくまで「お楽しみの時間」です。うまく話せたか、理解できたかを評価する必要はありません。親子で「一緒に笑った」「話が弾んだ」という体験そのものが、宝物として子どもの中に残っていくのです。
「ナンジャモンジャ・ミドリ」
山札から出てくる不思議な生き物に、その場で名前を付けていくゲーム。同じ生き物が再び出たら、以前付けた名前を誰よりも早く叫び、カードを集める。「間違えてはいけない」「うまく言わなきゃいけない」というプレッシャーはなし。思いついた名前をそのまま口に出していいので、言葉を出してみること自体が楽しい経験に。
「FLASH WORD」
カードに書かれたひらがなから始まる単語を素早く言うワードゲーム。考えるより先に言葉が出る、そんなスピード感が魅力。じっくり考える余裕がないからこそ、「間違えたらどうしよう」という不安が薄れる。言葉を出すことに慣れる、失敗しても大丈夫だと体で知る積み重ねが自己表現につながる。
「キャット&チョコレート 日常編」
次々に起こる日常のピンチに対して、限られたアイテムカードを使い、どう乗り切るかを即興で説明するゲーム。無理のある状況を「どうにか説明しきる」ところに面白さがある。うまく説明できなくても笑って終われることで、「考えて話す」ことへの安心感が育つ。
「ito」
1~100の数字カードを、テーマに沿った言葉で表現し、小さい順に並べていく協力型ゲーム。数字は直接言えず、「伝わりそうで伝わらない」会話を楽しみながら、全員で成功を目指す。数字という抽象的なものを言葉で表現し、すり合わせていく。どう説明するか、どう聞くかという過程が、対話力を育てる。
「ディクシット」
幻想的なイラストカードを使い、語り手は、自分のカードの絵に合う短い言葉を出す。他のプレーヤーは手札からその言葉に合いそうな絵を出し、どれが語り手のカードかを当てる。想像力や表現のズレを楽しむゲーム。ぴったり伝わらなくてもいいし、受け取り方が違ってもいい。正解のない表現を通して、多様な感じ方があることを知る。
「ベストフレンドS」
出された質問に対し、自分の答えではなく「相手が選びそうな答え」を予想してカードを出すゲーム。自分の気持ちだけで答えるのではなく、「この人ならどう感じるかな」と考えることを体験。「正解」を探すのではなく、他者理解の練習になる。プレーヤー同士の会話が自然に生まれ、楽しみながら関係性を深めることができる。
※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。











