88歳の今も現役として輝き続ける、その根底にあるもの
もうひとつ尊敬してやまないのは、アーティストとしての視点の正確さと創造性の豊かさです。一人ひとりの顔立ちを見て、すぐに長所短所を把握し、どこを隠してどこを目立たせたらいいのか。そのためにどんなテクニックが有効か。今のイメージと変えたいのならば、どこへ向かうといいのか、逆にやってはいけないことは何か。それらを瞬時に見極める能力は、本当にかなわないなと思います。特に、何かハプニングが起こったときの対処能力の的確さは、目を見張るものがあるのです。
アーティストとしての感性と技術が十分に備わっていて、さらにあふれんばかりの愛情をもってお客様に接する母。美に対するプロ意識と、お客様に対する200%の真心と。その両軸が母の唯一無二の個性だし、トータルビューティクリエイターとして88歳の今も輝いている理由ではないかなと思います。
世界のトップクリエイターとともに時代をつくりあげてきた母は、「かっこいい大人を増やして、日本を美しく豊かにする」という信念のもと、今もサロンに立ち、元気にお客様を迎えています。熱狂の時代に最先端を走ってきた自負と、今の時代のムードとのギャップ、また年齢を重ねて理想とする気力体力と、その現実との差に歯痒い思いをすることもあると思います。それでもなお、いろんなことにアンテナを張って、誇り高く生きている姿に尊敬の念を抱くばかりです。
一緒にいると、いまだに激しい口論も
そうはいっても親子ですから、きれいごとばかりではなく、一緒にいればいざこざは絶えないし、まだまだ衝突もします。つい最近も外出先でかなり激しいケンカをしたのですが、「じゃあ、どうしてほしいの!」と強く聞いたところ、「放っておいてほしい!」と返してきました。おそらく年寄り扱いをされることがものすごく嫌なんだと思います。
私の夫は「ドアを開けてあげないと」「重い荷物を持たせてはいけない」などと言うのですが、そうやってフォロー体制に入ると、すごくうっとうしそうな態度をするのです。だから最近は手放すことを覚えました。それがこの年齢まで現役で走ってきた母にできる最善の方法だと信じながら……。