ブレイン・ハック習慣術 第6回

習慣が続かない理由は、意志の弱さではありません。「できなかった自分」を責める感情と、「失いたくない」という心理の扱い方にあります。挫折を防ぐための思考法と、「それをしないと自分らしくない」と思えるレベルまで習慣を引き上げる方法を、行動経済学の第一人者・相良奈美香氏に聞いた。

「できなかった自分」を責める負のスパイラルを断つ

習慣が途切れると、多くの人は「できなかった自分はダメだ」という自己嫌悪に陥る。しかし、2000年ごろから20年以上にわたり行動経済学を研究・実践してきた相良奈美香氏は、このネガティブな感情こそが、次の行動を遠ざける最大の要因になると指摘する。

「一度ネガティブな感情にとらわれてしまうと、次に行動に移す確率が下がり、さらにその次も下がります。スパイラル状に状況が悪化してしまうのです」

人は本能的に、ポジティブな出来事よりもネガティブな出来事に強く反応する性質(損失回避性など)を持っている。そのため「できなかった」という事実は、実際以上に重く受け止められてしまうのだ。この負の連鎖を断ち切るには、どうすればよいのか。相良氏は「完璧を目指さないこと」の重要性を説く。

「まずは『完璧な人間はどこにもいない』と理解することです。できなかった日は『そんな日もある』と思うくらいで十分。ネガティブな感情をあえて経験しないように、自分を逃がしてあげることが大切です」

相良奈美香(さがら・なみか)
相良奈美香(さがら・なみか)
行動経済学コンサルタント。行動経済学を専門とする博士。米国と日本を中心に、10カ国以上で行動経済学の導入支援を行い、GAFAMを含むグローバル企業に対してコンサルティングを提供。あわせて、コンテンツ制作・配信を通じ、行動経済学を社会に広める活動にも注力している。代表作『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)は19万部を超えるベストセラーとなり、日本における行動経済学の認知拡大に大きく貢献した。
https://namikasagara.jp

継続のコツは「パーフェクト」への執着を捨てること

習慣化において重要なのは、継続そのものよりも「再開しやすい状態」を保つことだ。ジョギングを習慣にしている相良氏自身、出張や仕事の疲れで走れない日があっても、「自分はダメだ」と考えないようにしていると話す。

「普段は決めた距離を走りきりますが、ときには途中で立ち止まり、歩いてしまうこともあります。そんなときは、『こんなに疲れているのに、少しでも体を動かせた自分は偉い』と考えます。とにかくポジティブに捉え直すことが重要なのです」

もう一つ、多くの人が陥りがちなのが「ここまで続けてきたのだから、やめるのはもったいない」という心理だ。一見、継続を後押しするように思えるが、相良氏はこの心理が習慣化を阻む「罠」になる可能性があると注意を促す。

「“もったいない”という心理は、継続が一度も途切れないうちは効果的です。たとえば、4月1日から20日まで毎日継続できた場合、21日目は『記録を途絶えさせたくないから頑張ろう』と思えます。ところが、一度でも中断してしまうと、『完璧でなくなった自分』に失望し、一気に投げ出してしまうのです」

積み上げてきたものに依存しすぎると、失敗した瞬間にモチベーションが急降下する。だからこそ、最初から「1日くらい途切れても、まあいいか」と思える余裕を持つことが、長期的な継続の秘訣なのだ。

セルフイメージの書き換えが「当たり前」をつくる

では、脳を自己嫌悪に陥らせないために、どのような思考を持てばよいのか。相良氏は「セルフイメージのアップデート」をすすめる。

「人は何かをしようとする際、『これは自分らしい行動か』と無意識に判断しています。服を選ぶときに自分らしさを考えるのと同様に、行動もまた『自分らしさ』の基準で選ぶことができるのです」

相良氏自身も、このセルフイメージを日常的に活用している。

「ジョギングが面倒だと感じたとき、『私は運動が大好きな人間だよね』『行動経済学者なら、決めたことを実行するのが当然だよね』と自分に問いかけます。すると、自然に『やるのが当然だ』という思いが湧いてくるのです」

この考え方は、認知機能ケアとして注目される「ガンマ波サウンド」の活用にも応用できる。ガンマ波とは脳が高い集中状態にあるときに多く観測される脳波で、その特性に着目した音響技術がガンマ波サウンドだ。「自分は隙間時間にガンマ波サウンドを聴く、健康意識の高い人間だ」というイメージを持つことで、それは努力を要するタスクではなく、生活の一部として定着しやすくなるだろう。

「『自分はできる人間だ』と信じることは、コストもかからず、誰でもすぐに始められます。英語には“Fake it until you make it”(理想の自分を演じ続けていれば、いつか本物になる)という言葉があります。ヨガが上手になりたければ、上達するまで『自分はヨガが得意な人間だ』というふりをし続ける。それが結果として、本当の上達につながるのです」

義務感ではなく「自分らしさ」を基準にする

さらに、環境を整えることもセルフイメージを強化する重要な要素となる。実際、相良氏は起業当初、目指すべきクライアント像に見合うよう服装や持ち物を変えたことで、自身の振る舞いも自然と変化していった経験があるという。

あわせて意識したいのが、行動について「考える回数」を増やすことだ。

「1カ月に1回思い出すのと、1日に10回考えるのでは、思考の定着率が全く違います。繰り返し意識することで、その行動はやがて無意識の領域へと移っていきます」

習慣とは行動の積み重ねであると同時に、思考の積み重ねでもある。最終的に目指すべきは、食後の歯磨きのように「やらないと気持ち悪い」と感じる状態だ。

「『やらなきゃいけない』という義務感ではなく、『やったほうが自分らしくて気持ちいい』と思える状態にすること。それが習慣化の最も楽で、長く続く方法です」

音を聴くだけで脳波に働きかけ、将来の認知機能にも影響を与える可能性があると注目されているガンマ波サウンド。この聴取習慣が「当たり前」になれば、“自分らしく”いきいきと過ごせる時間は、確実に増えていくはずだ。

【コラム】脳の働きを支えるガンマ波サウンドの新習慣 Q&A

Q:聴いてはいけない人はいる? 安心して使うための注意点は?

ガンマ波サウンドは日常的に取り入れやすい音として設計されていますが、感じ方には個人差があります。音に敏感な方や体調に不安がある場合は、無理のない範囲で様子を見ながらご使用ください。なお、胎児・乳幼児・ペットへの使用は想定していません。また、連続して長時間使用することは避け、適度な音量でのご利用をおすすめします。

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