ブレイン・ハック習慣術 第1回

「集中力が続かないのは、意志が弱いからだ」と落ち込んだことはないだろうか。しかし、脳内科医の加藤俊徳氏によれば、集中できない原因は脳にあるという。脳の仕組みを理解し、鍛えることで、何歳からでも集中力を成長させることができる。

集中力が途切れるのは「気持ち」のせいではない

これまでアルツハイマー病やMRI脳画像の研究を続けてきた加藤氏は、集中力は、気合いや根性といった気持ちの持ちよう次第ではないと言う。

「集中力は脳で生み出されており、脳をどう働かせているかという、脳の仕組みの問題なのです」

脳にはさまざまな役割を持つ神経細胞の集積地があり、加藤氏はこれを「脳番地®」と名付けて体系化してきた(※)。脳番地ごとに得意分野があり、思考、感情、伝達など、それぞれ異なる脳番地が担っている。

加藤 俊徳(かとう・としのり)
加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医。医学博士。昭和医科大学客員教授。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。2006年、(株)脳の学校を設立。2013年、加藤プラチナクリニックを開設。MRI脳画像を用いた診断や脳番地トレーニングを実施している。『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)など著書多数。

加藤氏は、集中力とはどの脳番地をどの順番で、どれだけの強度で働かせるかという「脳の運用戦略」そのものだと言う。

「脳番地の一部だけを使うことも集中力ですし、目的に応じて複数の脳番地をネットワークとして覚醒させることも集中力です」

加藤氏は、集中力が低下する背景に「脳の無駄なエネルギー消費」があると指摘する。脳は必要な部位がピンポイントで働くときに最大効率で動作する。しかし、睡眠不足やストレスが重なると、広範囲に余計なエネルギーを使い、疲れやすくなるのだ。

一方、脳の覚醒度が高く、脳が本来の力をフルに発揮できる状態ならば、「集中しよう」と意識しなくても自然と集中が続く。つまり、パフォーマンスを最大化するためには、戦略的に脳を整えることが必要なのだ。

(※)加藤氏が提唱する「脳番地®」とは、脳の各部位をその機能や働きごとに分類し、地図のように名付けたもの。脳全体では120の脳番地に分けられるが、理解しやすくするために、似たような働きを持つ脳番地をまとめて8つの系統に分類している。この脳番地ごとに一生を通じて成長し続けると考えられている。

集中力と関係する脳波「ガンマ波」

そもそも集中しているとき、脳内では何が起きているのだろうか。鍵となるのが、人間の脳波の一つである「ガンマ波」だ。

脳波は周波数帯域により、デルタ・シータ・アルファ・ベータ・ガンマに分類される。脳が覚醒するほど高周波帯域へ移行し、最も高い活動レベルを示すのが30Hz以上のガンマ波だ。

脳波

「脳が覚醒すると、脳波の周波数も上がっていきます。その中で高頻度に活動している部分がガンマ波です。脳の覚醒が上がるということは、集中力の準備ができているということです」

特に集中して作業を行っているときや、高度な判断を要する場面では、ガンマ波が発生する傾向がある。ところが、多くのビジネスパーソンは、このガンマ波が発生しにくい生活を送っている。その最大の要因の一つが睡眠不足だと加藤氏は指摘する。

「睡眠不足で日中の脳の覚醒度が低下すると、集中するのに努力が必要となります。しかし毎日8〜9時間しっかり寝て、日中の脳覚醒度を高い状態でキープできると、脳が本来の力を発揮して何事にも集中して取り組むことができます」

加藤氏自身、この3年で平均睡眠時間を5〜6時間から8〜9時間へと延ばしたことで、日中の脳覚醒度が劇的に上がったことを実感している。忙しいときほど睡眠時間を削りがちだが、脳科学の観点では、睡眠を削ることは活動の源泉である集中力そのものを切り崩す行為ともいえるだろう。

また、ガンマ波は「今日だけよく眠れば出る」という単純な性質ではない。脳の覚醒は日々の積み重ねであり、前日の睡眠、起床後の行動、日中のストレス量といった複数の要因が連続した結果として形成されるからだ。

「脳は毎日絶え間なく活動しています。そのため、日々の集中力を保ち、パフォーマンスを高め、気分を良くするためのケアがとても大切です。ビジネスパーソンならば、毎日の覚醒のレベルを認識し、下がったら改善することが必要です」

聴覚から変化を惹き起こし、脳の仕組みを変える

安定した判断力を維持するには、単発の対策ではなく“集中力を支える生活リズム”を整える習慣をつくる必要がある。

加藤氏は、聴覚を刺激することのメリットを指摘する。視覚が外界の情報認識に広く配慮を要するのに対し、聴覚はより即時的な覚醒スイッチとして働くからだ。眠気が強いときに話しかけられると意識が戻る、あるいは不意の音で思考がリセットされる。誰しもそんな経験をしたことがあるだろう。

「ビジネスパーソンは、絶えず目を使って人と会ったりしています。その中で重要な判断をするときは、目を閉じ、聴覚をリセットして集中力を高めることが有効です。例えば、目を閉じて呼吸を深め、1つ、2つと数字をカウントすると集中できますよね」

自分の声を聞くことも、脳を強く覚醒させるという。文章を声に出して読む、会議前に要点を口頭で整理するなど、自ら発することで、脳のスイッチが入りやすくなるのだ。

「声を出すことは単なる音声行動ではなく、思考、感情、理解など、複数の脳番地を同時に活性化させるからです」

また、「ガンマ波サウンド™」の活用も注目されている。これは、ラジオやテレビ音声などをガンマ波と同じ周期に変調した音を聴くことで、自然なかたちで聴覚から脳を刺激してガンマ波を惹き起こすアプローチだ。

ガンマ波サウンド

加藤氏もガンマ波サウンドは「聴覚刺激」で“脳の切り替えスイッチ”をする際のサポートとして使うことが可能とみる。

「集中するのにガンマ波がどれだけ必要かということは、よくわかっていません。また、脳はとても個性的なので一概には言えませんが、レム催眠中に脳の一部の周波数が連動して働くと神経細胞が活動して、ガンマ波が出ることがわかっています。人間の脳は、変化のときにものすごくエネルギーを使います。こうしたサウンドを活用して変化を引き起こすことで、脳の注意力を変え、脳の仕組みを変えることも考えられます」

加齢によりガンマ波は弱くなるという。しかし、自ら脳の仕組みを変え、効率よく働かせることができれば、集中力を成長させることができる。その習慣づくりをサポートするアイテムとして、ガンマ波サウンドを生活の中で取り入れてはどうだろうか。