ダメ押しされると言い返したくなる理由
表面上は「意見の衝突」や「条件のズレ」に見えても、その裏には「承認欲求が満たされない不満」が隠れており、それこそが関係を壊す原因になっているのです。
現代では「論破」という言葉がもてはやされる風潮がありますが、これは悪い方向に承認欲求が刺激されやすい状況だと感じます。
論理的に正しいことを証明すること自体は悪いことではありません。けれども、相手の承認欲求を踏みにじってまで勝ちにこだわると、対話そのものが壊れてしまいます。
表面的には意見や条件的対立に見える問題も、根本には承認欲求を火種にした感情の対立がある。この視点を持つだけで、対人関係の見え方がまったく変わるはずです。
承認欲求がこじれると、相手の言葉を必要以上にネガティブに受け取ってしまいます。また、ときには実際に、相手から強い否定や口撃を浴びることもあるでしょう。そんなとき、どう返すかによって、その後の関係の継続性が大きく変わってきます。
たとえば、相手から「君のやり方はダメだ」と強い口調で言われたとします。すると「いや、あなたのほうが間違っているんだよ」と言い返したくもなるでしょう。けっこう、こういう場面で瞬発的に「感情的対立」が起きることはよくあります。
「オウム返し」で京都人の知恵を実践
ですが、本当は多くの人がわかっているはずです。これでは火に油を注ぐように対立が激しくなるだけだと……。
私がこういう場面で推奨しているのが、相手の言葉を「オウム返し」することです。相手の言葉をそのまま、あるいは説明口調に言い換えて繰り返すことは、思っている以上に有効です。
京都人は「本音を言わず、たてまえで話す」と言うと、とかく「お世辞を言えばいいのかな?」と思いがちですが、単純に「オウム返し」するだけでも近い効果があります。
もし、相手が自分の考えや想いを伝えたい気持ちが強い場合、たとえば相手が「今回の計画は、そもそも収益の見通しに無理があると思う」と意見を言ってきたとします。
ここで「いや、あなたは、この収益予測、詳しい根拠まで知らないでしょ?」とか反発するのではなく(したい気持ちもわかるのですが)、「あなたは収益の見通しに無理を感じてるんですね」とか「なるほど、収益予測に不安を感じているわけですか」というふうにワンクッション入れることで、相手は「自分の考えを理解してくれた」と感じます。
この「オウム返し」は、どう考えても酷い口撃のようなケースでも、合気道のようにかわすことが可能です。