新たな家電のジャンルが生まれた

インターネットなどによる遠隔のコミュニケーションが発達した時代ではあるが、コロナ禍を経て、改めて対面による濃密さや意思疎通の速さを実感した人も多いだろう。生身の対話が、ビジネスの新たな可能性を開くのだ。

狭小なスペースにも設置しやすいドラム式洗濯乾燥機
写真提供=パナソニック
狭小なスペースにも設置しやすいドラム式洗濯乾燥機

日本で少子化が始まったのは1975年で、晩婚化もその頃から、と実は半世紀前から、ライフスタイルの多様化は始まっていた。というより、4人の核家族が多数派を占めた昭和半ばが特殊な時代だったのである。しかし、多様化は徐々に進むので、いつどのように社会が変わったのか同時代に見定めることは容易ではない。

自治体のサービスは、いまだに子育て世帯やシニア世代向けが中心で、シングルや働き盛りの2人世帯への注目は少ない。地方でも、核家族や拡大家族を前提とする社会構造が根強く残る。

「昭和からの脱却」は掛け声だけになりがちな社会で、生活を支える大手家電メーカーが少人数家庭向けの高機能商品を売り出した意味は大きい。もちろんそこには、高所得寄りの層を取りこぼしてきたという発見もあるのだろう。

しかし、主婦が1日中「コマネズミのよう」に働く前提だった昭和半ばに、家事をラクにする家電が広まって女性の社会進出を後押ししたように、コンパクトなのに高性能な家電のジャンルが生まれることで、「子どもがいない」「パートナーがいない」引け目を感じなくて済む時代になれば喜ばしい。まず何より、多忙な働き盛りが、小さな家でも場所を塞がず家事をラクにする家電を使って、暮らしの余白を楽しめるようになった意味は大きい。

阿古 真理(あこ・まり)
生活史研究家

1968年生まれ。兵庫県出身。くらし文化研究所主宰。食のトレンドと生活史、ジェンダー、写真などのジャンルで執筆。著書に『母と娘はなぜ対立するのか』『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『「和食」って何?』(以上、筑摩書房)、『小林カツ代と栗原はるみ』『料理は女の義務ですか』(以上、新潮社)、『パクチーとアジア飯』(中央公論新社)、『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』(NHK出版)、『平成・令和食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)などがある。