単なる「スマホの使いすぎ問題」ではない
コヴァチッチ氏らはさらに踏み込み、この関係がどのような仕組みで生じるのかを分析しました。
その結果、重要な役割を果たしている可能性が高い要因として浮かび上がったのが「孤独感」です。
子どもの頃の逆境的な経験は、自尊心の形成や感情のコントロール能力に影響を与えることがあります。その結果、大人になってからも孤独感を抱えやすくなったり、人との関係に不安を感じやすくなったりするわけです。
そして、その孤独感を和らげる手段として、ソーシャルメディアが利用されている可能性があるのです。
言い換えれば、「幼少期の逆境 → 孤独感や社会的孤立 → その苦しさを紛らわせる手段としてSNSを利用する」という流れが生じている可能性があります。
こうして見ると、ソーシャルメディア依存は単なる「スマホの使い過ぎ」問題ではなく、もっと深い心理的背景と関係している可能性があることがわかります。
対策は「利用制限」だけでは足りない
こうした研究結果から見えてくるのは、ソーシャルメディア依存を単なる「使い過ぎ」の問題として捉えるだけでは不十分だということです。
もちろん、未成年の利用時間を制限したり、年齢制限を設けたりすることは一定の効果があるかもしれません。しかし、もしソーシャルメディアの過剰利用の背景に、子どもの頃のつらい経験や強い孤独感があるのだとすれば、利用を制限するだけでは根本的な解決にはならない可能性があります。
むしろ重要なのは、その背景にある心理的な問題に目を向けることです。
子どもの頃の逆境経験を抱える人に対しては、孤独感や自己肯定感の低下といった問題に早い段階から向き合う支援が必要になります。学校、医療機関、福祉サービスなどが連携し、支援が必要な子どもや若者を早期に見つけ、心の回復力――いわゆる「レジリエンス」を高める取り組みを行うことが重要だと考えられます。
(*1)Khalaf, A. M., Alubied, A. A., Khalaf, A. M., & Rifaey, A. A. (2023). The Impact of Social Media on the Mental Health of Adolescents and Young Adults: A Systematic Review. Cureus, 15(8), e42990.
(*2)読売新聞オンライン(2026)「若者のSNS依存が深刻、10~20歳代の6%が「病的使用」疑い…うち3割が使い方巡り「家族に暴言や暴力」」
(*3) Kovacic, M., Orso, C.E. (2025). Wounds of the past, screens of the present: how childhood adversities shape social media behaviours in adulthood. Rev Econ Household 23, 1323–1369.
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。