自信のなさ、不安感は操られやすい
こうしたブランディングというわざとらしい振る舞いの裏に隠されているのは、ただの不安だ。
自分は脇に追いやられてしまうかもしれない不安、ほかのものに置き換えられて、不必要になってしまうかもしれない不安である。
このような不安は操られやすい。
ある講演にて。
一流の「ブランド専門家」が聴衆をその場に立たせた。その中の半数を超える人たちは、再び着席するよう指示される。
そして聴衆たちに伝える。
「まだ立っている人たちを見てください。オックスフォード大学のある研究によれば、今立っているおよそ47%の人たちの仕事は、今後、機械に置き換えられます」
しかし、座っている人たちも「自信がない」と感じていただろう。なぜなら、明日にでも自分も席を立たなければならなくなるかもしれないからだ。
機械、あるいは、「この部屋の中にいる、自分よりもできる人」に置き換えられるかもしれない。
このとき、「一流のブランド専門家」は自分自身も同じ立場にあることを自覚していなかったらしい。
それどころか、彼女の地位はいとも簡単に機械に置き換えられてしまうかもしれない。
彼女がしていることは、同じメッセージをくり返し、動揺している聴衆に向けて発砲することだけだ。
私たちはなぜ走りつづけるのか
私たちは常に聞かされている。
すべてが変化している。転落しないよう、動きつづけなければならない、と。
『鏡の国のアリス』に登場する気性の激しい赤の女王が言うように、その場にとどまるためには全力で走りつづけなければならない。
私たちは常に、転落の危険にさらされている。
転落すると元いた場所には所属できなくなる。それだけでなく、増えつづける敗者の群れに加えられる。
走りつづけるのをやめてしまった人々は、だれからも求められず、採用もされず、同情もされない。
いくらかの人々に関しては「統計には表れない」危険をはらんでいる。あまりにも些細な存在で、数字にも表れない。
そうなるとどうなってしまうのか?
幽霊か、影か?
そのようなことは、決して起きてはならない。
だから、私たち人間は、利益を得られるのであれば、無意味とわかっていても進んでやる。
それは単に生き残るためかもしれない。
あるいは、成功を望んでいるからかもしれない。
ドイツのマールブルクとミュンヘンにて文学、コミュニケーション学、政治学、音楽を学び、ミュンヘン大学にて博士号を取得。長年にわたり経営とコミュニケーションに関する書籍の執筆活動に勤しむ。主な分野は信頼、ミクロ政治、パワーゲーム、経営者のための心理学や経営バイオニクス(企業と経営者が自然から学べること)。ドイツ・バイエルン放送にてラジオ番組の制作に携わる。また、大企業において数多くの講演をおこない、基調講演者として人気を博す。講演者向けのコーチングやセミナーを提供。プレゼンテーションや講演、挨拶、モチベーションを高めるためのスピーチの準備や企画の支援など、幅広い分野で活躍。
