「やればできる」を示す“豊後高田モデル”
この「花っこルーム」も“豊後高田モデル”の代名詞と言えるだろう。
運営はNPO法人が行っており、子育てを終えた母親や、子どもの手が少し離れた子育て中の母親がスタッフとして常駐し、親と子どもが自由にやってきてはさまざまなプログラムを行ったり、お互いに交流を深めたりする場となっている。母親一人の孤立した子育てではなく、社会に開かれた場で同じ境遇の先輩ママに頼ったり、頼られたりしての子育てが、豊後高田市では可能なのだ。
さらに保護者の就労や病気、リフレッシュのためなどの「子どもの一時預かり事業」や、「病後児保育事業」「家事サポート事業」、話し相手や一緒に出かけるなどの「利用者支援事業」「多胎児家事育児サポート事業」や、個別のニーズに対応する相談業務など、かゆいところに手が届くさまざまな子育て支援事業が用意されており、とりわけ移住者にとって、見ず知らずの土地での子育てにおいてどれだけ頼りになり、心強いことか。
香々地の「花っこ」は日曜・祝日もオープンしているため、それぞれの特徴に応じて、3つの施設を回遊する母親も多いという。
この細やかな支援事業には、NPO法人や市の女性職員の経験や知恵が見事に生かされている。だから具体的であり、実際に役立つものであり、無駄がない。
空振りの少子化対策ばかり、もう何十年と耳にしている。まず必要なのは、現状から出発することだ。そして、豊後高田市を見れば「やれば、できる」ことが如実にわかる。
「子育ては、社会全体で支えるべき」――国も自治体もここにこそ、少子化対策の原点を据えるべきであり、何をするかはおのずと見えてくるだろう。
福島県生まれ。ノンフィクション作家。東京女子大卒。2013年、『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』(集英社)で、第11 回開高健ノンフィクション賞を受賞。このほか『8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語』(集英社)、『県立!再チャレンジ高校』(講談社現代新書)、『シングルマザー、その後』(集英社新書)、『母と娘。それでも生きることにした』(集英社インターナショナル)などがある。