「子持ち様」問題の実態を調べた調査はほとんどなかった
いま日本社会は、少子化や人手不足が深刻化する中で、子育て世帯をどう支えるかが大きな課題となっています。
その一方で、職場の現場では子育てに伴う負担のしわ寄せが問題視され、「子持ち様」という言葉が広まりつつあります。「子持ち様」とは、子どもがいることを理由に、職場で“しわ寄せ”を生んでしまう親を指すネットスラングです。
SNSでは「同僚が育休に入ったのに補充がなく、残業が倍増した」「子どもの体調不良で早退した人の仕事が全部こちらに回ってきた」といった声が投稿され、共感や反発を呼んでいます。
この反響を見ると、「子持ち様」問題は、単なるネットスラングではなく、少子化対策・働き方改革・企業の人材確保といった社会的テーマとも密接につながっていると考えられます。
にもかかわらず、その実態をデータで検証した調査はほとんどありません。
誰がどんな影響を受けているのか、実はよく分かっていないのです。
そこで筆者はデータを基に実際に分析を行いました。すると、意外な層が影響を受けていることが明らかになったのです。今回はその驚きの結果を紹介していきます。
育児による人出不足がわかる貴重なデータを活用
今回の分析に使ったのは、独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)が2019年に行った大規模調査『人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査』です。対象はなんと企業4599社と従業員1万6752人。かなりのボリュームです。
この調査の面白いところは、「人手不足が起きた理由」まで聞いている点です。選択肢の中には「育児のための休職や時短勤務の増加」という項目があり、まさに子持ち様問題を考えるうえでピッタリのデータだといえるでしょう。
子持ち様問題の仕組みをざっくり整理すると、①育児事情で一部の人が抜ける→②残ったメンバーに仕事が回る→③負担が増えてストレスがたまる、という流れです。そこで今回は、この①が起きたときに本当に③のストレスが生まれているのかどうかを、「仕事満足度」という指標を使って検証してみました。