すべては相手への肯定から始まる

大切なのは、まず一度受け止めること。

“つまづいたって いいじゃないか にんげんだもの”

こちらは相田みつをさんの名言ですが、このように一度肯定し、安心感を与えることからすべてが始まります。

・議論が白熱して、後輩がクライアントを怒らせてしまった
→「そこまで腹を割って話せる関係を築けたのはすごいよ。次は……」
(積極的な姿勢を褒めて、次につなげる)

・パートナーが慣れない皿洗いで皿を割ってしまった
→「洗ってくれてありがとう! 油ものにはコツがあって……」
(挑戦を褒めて、次につなげる)

ポイントは、うまくいかなかった中にも、よかった点やその人なりの特長、小さな成長を見逃さないことです。

自分の中に「相田みつを」を登場させるイメージで、一度失敗も受け止めてから改善ポイントを伝えることで、背中を押すことができます。

挑戦した勇気を讃える
“PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ”

これはサッカー元イタリア代表ロベルト・バッジョの名言で、チャレンジを認める言葉の典型です。失敗を非難するのではなく、挑戦そのものに敬意を表す。このスタンスが、次の挑戦を生みます。

イップスという言葉をご存じでしょうか? 過去の失敗による極度の緊張や自信喪失のことです。ミスがトラウマとなって、挑戦することをやめてしまう。そうならないためにも、失敗を非難するのではなく、挑戦を褒める姿勢がマネージャーには求められます。

時間軸をずらして褒める

失敗直後はどうしても落ち込み、ネガティブに傾いてしまうものです。そんなときは、「これまでこんな成果を出してきた(=だから次はできる)」と過去の実績を褒めて勇気づけることも有効な手段です。

また逆に、過去ではなく未来を褒めるという手法もあります。「今はまだ結果は出てないけど、この努力を続けていたら必ず大きな成果につながる」と、未来の可能性や根本的な強みに目を向けるのも有効です。

今回だけはうまくいかなかった、でも次はできる。これが失敗にめげない褒め方です。

部下が失敗したときに上司がすべき2つのこと

最後に、チームメンバーの失敗に直面したときに、マネジメントとしてすべきことを2つお伝えします。

山本渉『できるリーダーはどこを「ほめる」のか? チームが自然と動き出す「戦略的ほめ方」』(朝日新聞出版)
山本渉『できるリーダーはどこを「ほめる」のか? チームが自然と動き出す「戦略的ほめ方」』(朝日新聞出版)

一つは「また挑戦の機会を与える」こと。褒めるだけでなく、「次も任せるよ」という言葉が、相手にとって最大の励みになり、信頼の証となります。

もう一つ重要なのは、この失敗をしっかり記憶しておくことです。そして失敗を乗り越えて成果を出したときこそ、最大限の称賛を送るタイミングです。「あのときの苦労がここにつながったね」と言えること。これが、本書『できるリーダーはどこを「ほめる」のか?』の10節でお伝えした「垂直承認」です。

人は、自分の歴史を覚えてくれている人を信頼します。共に悔しがり、共に喜んでくれるリーダーこそ、メンバーがついていきたくなる存在です。

失敗を失敗で終わらせないのも、マネジメントの重要な仕事です。それは甘やかすことでも、詰めて脅して改善させることでもありません。次はうまくいくようにガイドする「励まし承認」を、ぜひ実践してみてください。

ポイント➡メンバーが失敗したときこそ、「褒め」の発揮しどき。
山本 渉(やまもと・わたる)
マーケティング会社統括ディレクター

引きこもりを経験し、高校を中退後アメリカに留学。大学でマーケティングとエンターテインメントを学び卒業。帰国後、国内最大手のマーケティング会社に入社。現在はジェネラルマネージャー。部長を束ねる統括ディレクターも兼ね、年間100近いプロジェクトをメンバーに依頼している。著書『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)はベストセラーに