ぬいぐるみを優しく抱き続けた愛子さま

あるいは、昨年11月に初めての海外ご公務でラオスを訪れられた時のこと。同国では国賓に準じた丁重な歓迎を受けられた。国家元首のトーンルン・シースリット国家主席との一対一の会談では終始笑顔を絶やさず、こまやかな配慮を示されつつ、堂々と対応された。

そうした重大な日程の合間に、次の場所へ移動される時に、近くの地点に案内した現地の男性に対して、やはりその一瞬もお座なりにされず、その人にきちんとお顔を向けて微笑まれ、感謝の気持ちを示された。殿下が通りすぎられた後に、その男性がいかにも幸せそうな表情を浮かべていた映像が話題を呼んだ。

現地の「ラオ・フレンズ小児病院」を見舞われた時も、印象的な場面があった。入院している子どもから象のぬいぐるみを贈られた後、ご移動に合わせて側近の者が何人か、ぬいぐるみが邪魔にならないように受け取ろうとしても、子どもの好意をないがしろにされず、すぐには渡されないで、しばらく優しく抱き続けておられた。(2025年12月26日公開 「愛子さまは象のぬいぐるみを優しく抱き続けた…」皇室研究家が見た“愛子天皇待望論”世界的発展の兆し 参照)

こうしたわずかな事例だけからでも、「感謝と思いやり」が敬宮殿下の心に深く根を張っていることが分かる。

両陛下が心を合わせて背中を押し続けている

ここで見落としてはならない事実がある。それは敬宮殿下がしっかりと身につけておられる「感謝と思いやり」の気持ちは、ほかならぬ両陛下によるご幼少期からのご教育、ご薫陶の賜物である、という事実だ。

天皇陛下は敬宮殿下が学習院初等科の1年生から2年生に上がられる手前の時点で、つぎのように述べておられた(平成21年[2009年])。

「私たちの今後の教育方針と言っていいか分かりませんが、誠実で人に対する思いやりの心をはぐくむことがとても大切と考えています」

また、初等科から女子中等科に進まれる手前の段階では、以下のようにおっしゃっていた(平成26年[2014年])。

「自分で考え、行動できるようになるとともに、周囲への感謝の気持ちや配慮を大切にしながら、健やかに育ってほしいと思います」

両陛下の教育方針の中で、「思いやり」と「感謝」がどちらも、早くから大切な柱になっていた。それが土台となって、敬宮殿下が自覚的に「感謝と思いやりの気持ち」が取り分け大切であると思い至られた。

その敬宮殿下ご自身の“気づき”に対して、両陛下が平素はもとより、お誕生日ごとの記者会見やご感想を通しても、心を合わせて背中を押し続けてこられている……。

ご一家の心の絆

これまでの経緯を振り返ると、美しい心のキャッチボール、あるいはバトンリレーとも言うべき、ご一家のこまやかな“心の絆”が、目に見えるようだ。そのような心の絆も、親子=直系だからこそあり得ることだろう。

令和の皇室において、天皇の地位を受け継ぐのに敬宮殿下よりふさわしい方が、ほかにおられるだろうか。

高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者

1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録