「3日でキャラクターになり切る」と宣言した成田凌の演技力

【白】ロケ地が決まったので早速、シナリオハンティングのために現地に行きました。ちょうどいい感じの公民館を3人で見ていたところ、地元の方に「どこの建築会社の人間だ!」と追い返されました(笑)。

【港】怒られましたね。ただ単にこの公民館が撮影に使えるかどうか見ていただけですが、怒られて“出禁”になりました。

――次にキャスティングについて聞かせてください。主人公の成田凌さん、物語のカギを握る沢尻エリカさんとの撮影秘話を聞かせてください。

【白】まずは成田さんですが、最高という言葉しか見つかりません。彼は演出プランをしっかり立てるタイプで、会った時に「3日で浅岡信治になります」と自信満々で言ってくれました。でも初日からすでに信治そのものといった様子で驚きました。細かい動作一つひとつにこだわりを持ち、撮影中もその都度さまざまな提案をしてくれました。

白金監督と脚本家・港岳彦さん
撮影=北日本新聞社

――ラストシーンの成田さんの演技がとくに圧巻でした。

【白】そうなんです。最後の表情も成田さんの提案で着地しました。あの表情に成田さんの人生経験や人となり、味が出たと思っています。

【港】沢尻さんも少しやる気のない新聞記者を見事に演じられていました。

【白】沢尻エリカさんのことは大学時代、日本語を勉強していた頃から知っていました。要するにファンです。彼女が出演していたドラマを見ながら日本語の面白さを感じていました。

――「あっという間に仕上がりましたね」というセリフも印象に残っています。

【港】沢尻さんに決まったと聞いた時点で「この人にこのセリフを言ってほしい」という願望が目覚めました。

【白】「死ねよ、クソ田舎」は最高でした。

【港】あれは沢尻さんしか言えないセリフだったな……。

【白】沢尻さんにある日、「この作品はこれまで出演してきた作品とどこが違いますか?」と質問したことがあります。その時に「自分という人間をそのまま演じることができる」と答えてくれました。今回の作品でありのままの沢尻さんの姿にも注目してもらいたいですね。

脚本から小説へ! 『#拡散』が描くもうひとつの物語

本作は、白監督の手によって映画化が実現したが、映画を小説化した『小説 #拡散』(プレジデント社)も2025年12月10日から全国書店で発売されている。映画の脚本と、小説の執筆を務めた港さんに制作秘話を伺った。

――港さんは映画の脚本に続き、『小説 #拡散』も執筆されました。脚本を書かれてから小説を執筆されたと聞いています。

【港】普段はすでに発売されている小説や漫画を脚本にする仕事をしています。読みながらどの部分が映像作品として成立するか、ということを探り構想を練っていきます。しかし、今回は脚本が出来上がってから小説化のお話しを頂いたので、さぁどうしようという思いでした。

脚本家・港岳彦さん
撮影=北日本新聞社

――いつもと逆の作業だったわけですね。戸惑いもあったかと思いますが、小説としてどんなふうに組み立てていったのでしょうか。

【港】脚本を大幅に動かして別物にするという手もありますが、それは望んでいませんでした。小説を読んでから映画を観てくださる方、またその逆の方がいると思うので、大枠は崩したくないという気持ちが大きかったです。

――映画、小説ともに世界観はそのままで書くという作業も難しそうです。

港岳彦『小説 #拡散』(プレジデント社)
港岳彦『小説 #拡散』(プレジデント社)

【港】脚本を書く時は、登場人物の心理描写は書かないというルールがあります。しかし、小説の場合は登場人物のバックボーンや心理描写など、すべて書いてもいいので何を書いて何を書かないか、というさじ加減が難しかったですね。でも、自由度があるので書いていてとても楽しかったです。

――ラストも少し終わり方が違うので見比べる楽しみがあります。

【港】夫婦の物語をどんなふうに決着させようか悩みました。いろんな可能性を試しましたが、結局は無駄なことは付け足さず、映画のラストシーンとは違うところに落ち着きました。もっと書いてもよかったのかもしれません。でも、自分の中では「これ以上書く必要はない」という結論に至りました。

――映画を観てから小説を読むか、小説を読んでから映画を観るか楽しめそうです。

【港】両方を楽しんでもらえたらうれしいです。