熊本では順調に貯金が増えた
ハーンの日本での第1作で出世作となるのは、『知られぬ日本の面影』である。彼は既に、その最終校正を発送していた。ところが、契約条件への怒りに駆られ、出版契約書を突き返すようなことをした。それとても、ハーンの表情から状況を察したセツが、ポストではなしに抽出しに投函していて、トラブルを免れていたのである。
熊本来住の1年後に転居した家には、書斎に当てた八畳の離れに、薪ストーブと硝子障子を入れて、ハーンは二冬とも快適に過ごしている。また、150坪もある庭では、金十郎(セツの養父)から弓の指南を受け、その独眼での首尾に気を良くしていた。さらには、貯金も順調に増えて、セツは、経済的な安心を覚えるようにもなっていたのである。
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