投資に回っていたのは「手取りの36%」
筆者は日頃さまざまな方とお話させていただいていますが、こういった考え方をされる方は増えていると感じています。
Aさん夫婦のように、まず最も優先順位が高いものが老後資金で、次に教育費。そしてその次に自動車や被服費、レジャー費、といったかたちです。
確かに、老後資金と教育費を最優先事項とするなら、これらのつみたて計画をたて、つみたてを拠出していくのが合理的な行動です。
ただ、多くの方が投資に関心を持っている今、投資への優先順位は無意識に高まっているようです。Aさん夫婦の場合、手取り収入に対しおよそ36%を投資にまわしていました。
つみたてにまわすということは、将来のためにお金を使わずにとっておく、ということです。その分、目先の暮らしに使える金額は少なくなります。その結果、今の生活の質や持続可能性を下げる可能性があり、長期にわたる安定した資産形成をつづけにくくなることがあります。
家計に無理がないか測れる「50・30・20ルール」
ここで参考になるのが、「50・30・20ルール」です。これはアメリカ発の家計管理術で、金融教育のワークでも用いられる代表的な支出配分ルールです。
支出を大きく3つに分けて考える方法で、生活に必要な支出(Needs)を50%、ゆとりや自由支出(Wants)を30%、貯蓄やつみたて、繰上返済など将来のためのお金(Savings goals)は20%におさえる、というものです。
(参考:米・消費者金融保護局/CFPB「Students analyze case studies and apply the 50-30-20 rule of budgeting.」)
もちろん、子育て世帯やひとり親世帯など、ご家庭の状況によっては、きれいにこの比率に収まらないこともあると思います。生活に必要な支出が50%を超えることもあるでしょう。知っておきたいのは、これは家計の成績をはかるものさしではなく、家計に無理がないか、長生きできるか、ということを確認するための目安だという点です。
そのうえで注目したいのが、“Savings goals”の割合です。つみたて、というと老後資金のつみたてをイメージされる方は多いと思いますが、ここでいう20%は、将来のためのお金を広く想定しています。具体的には、老後資金のつみたてだけではなく、緊急生活資金や教育費、近い将来の支出に備える準備資金などを含んでいます。
たとえば家具・家電の買い替え資金、車の買い替え資金といった、数年以内に発生しうる支出に備えるつみたても、この20%の中で考えるのが基本です。こうした資金は、預貯金など安全性の高い持ち方が適しています。
したがって、年間手取り収入額に対して20%を超える金額を“投資”に拠出している場合は、黄色信号が灯っているといえます。Aさん夫婦は前述のとおり36%ですから、場合によっては赤信号である可能性もあると推察されます。