なぜ「献身的」だと悪化するのか
まず、なぜ親が献身的であればあるほど、解決が難しくなるのでしょうか。その最大の理由は、親御さんが「無理をして自分を消耗させてしまっている」点にあります。
「子どものサポートをするために」と仕事を辞める。「栄養をつけて元気になってほしいから」と、自分は疲れているのに必死で完璧な食事を作る。「情報収集しなきゃ」と夜な夜なスマホで検索を続ける。
このように、親御さんが自分の人生や体力を削って(消耗して)お子さんに関わると、その時点で親子関係は「対等」ではなくなってしまいます。
親御さんは言葉にしなくても、全身から「私はあなたのために、これだけ犠牲を払っている」というメッセージを発することになります。お子さんからすれば、それは愛情というよりも、逃れられない重たい「プレッシャー」としてのしかかります。
子どもの自己肯定感はどん底まで下がる
「お母さんが仕事を辞めたのは僕のせいだ」「お母さんがこんなに辛そうなのは、私が学校に行っていないからだ」
子どもは親のことをよく見ています。
親が消耗すればするほど、子どもは「親の期待に応えなきゃいけない」と追い詰められたり、「自分は親に無理をさせている」「自分は誰かの負担になっている」と感じてしまったりします。家庭の中で、まるで自分が触れられたくない“腫れ物”のように扱われていると感じると、子どもの自己肯定感はどん底まで下がります。
さらに恐ろしいのは、この関係性が「家の外の世界」への認識も歪めてしまうことです。
親との関係で「人間関係=誰かに無理をさせること」「自分=他人に迷惑をかける存在」という図式を学んでしまうと、外の世界に出るのが怖くなります。「外に出たら、また誰かに迷惑をかけるかもしれない」「また誰かを消耗させるかもしれない」という恐怖心が、ひきこもりをさらに強固なものにしてしまうのです。


