不登校が長期化してしまうのはなぜなのか。神科医の村上伸治さんは「不登校になると子どもは学校に行けないことで自分に自信をなくし、親は焦ってプレッシャーをかけてしまう。『不登校→親の焦りと子の自己否定→不登校悪化』という悪循環が回り始めると長期化してしまう」という――。

※本稿は、村上伸治『発達障害も愛着障害もこじらせない もつれをほどくアプローチ』(日本評論社)の一部を再編集したものです。

黄色のソファに座って悲しむ子供
写真=iStock.com/interstid
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不登校の激増

わが国では少子化が急速に進んでいるのに、不登校は増加の一途をたどっています。特にこの数年は激増と言えるほどに増えています(図表1)。令和2年からの3年間の増加は「コロナ禍」のせいだろうなどと言われていましたが、コロナ禍がほぼ終息した後の令和5年も大幅に増加しているのが現状です。その原因や対策について、多くの専門家がさまざまな意見を述べていますが、答えといえるものはまだありません。

体の症状で始まる

不登校の多くは体の症状で始まります。朝起きると、お腹が痛い、吐き気がする、頭が痛いなどの症状です。「学校へは行きたいのだが、体調が悪いので行けない」ということで、病院で診てもらうことになります。

血圧が低いので起立性調節障害との診断を受け、血圧を上げる薬をもらっている子もいます。これらの診断は間違ってはいないのですが、体の治療で元気になり、登校できるようになった子を私はほとんど知りません。ただ、身体の治療で登校できるようになれば、精神科には来ないでしょうから、これは私が出会ってないだけなのかもしれません。

体の症状がしっかりあると、精神的な症状は目立ちません。ですが、精神面を尋ねていくと、精神的には元気ですという子はまずいません。週末や連休、夏休みなど、登校のプレッシャーが弱まる時期は体の症状も精神症状も軽くなります。これこそが、精神的な側面があることを意味しています。そして、紆余曲折を経て最終的に精神的に元気になった頃には、体の症状はなくなっているのが普通です。